事業縮小に乗り出すEVシフトの担い手・ノースボルト社

スウェーデンのバッテリーメーカー、ノースボルト社が不振に喘いでいる。同社は9月9日、北東部シェレフテオにある工場で大規模なリストラに着手すると発表した。具体的には、正極活物質(CAM)の生産を停止するとともに、経営資源をセルの生産に注力する。この事業再編に伴い、約7000人いる従業員の削減にも着手するという。

2024年3月25日、2026年から電気自動車用のバッテリーセルを生産するノースヴォルト工場の公式着工式に出席したショルツ首相とハベック経済相。
写真提供=DPA/共同通信イメージズ
2024年3月25日、2026年から電気自動車用のバッテリーセルを生産するノースボルト工場の公式着工式に出席したショルツ首相とハベック経済相。

同社は、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)社やスウェーデンの投資ファンドであるヴァーガスホールディング、コンサル会社であるロカルマなどが出資した新興企業だ。欧州連合(EU)が掲げる電気自動車(EV)シフトの担い手として期待された企業でもあり、2021年末からスウェーデンで車載用バッテリーの生産を始めていた。

その後、EVの急速な普及を受けて事業は順調に拡大、今年1月にはシェレフテオにある工場の拡張のために50億ドルの融資を受けたばかりだった。またスウェーデンのみならず、ドイツやポーランド、そしてカナダでの事業拡大を計画していた。それからわずか半年で、ノースボルト社は事業の抜本的な見直しを余儀なくされたことになる。

ノースボルト社がリストラを断行する理由は、EVの不振にある。EUの目論見に反して、EVの域内市場での普及には急ブレーキがかかっている。いわゆるアーリーアダプターへの普及が一巡し、カーユーザーへの購入補助金がカットされたためだ。インフレ対策として欧州中銀(ECB)が利上げを進めたことも重荷となっている。

業績不振に直面しているノースボルト社、プレスリリースより
業績不振に直面しているノースボルト社、プレスリリースより