インカムゲインはないがリスクヘッジとして大活躍

24年から政府主導の資産形成促進制度「新NISA」がスタートしたのを受けて、金への投資も増加傾向に。そこで、金に投資する際、どんなスキームにすればいいのかを、ご説明します。

投資に詳しい人は、「金は、株や不動産などと違って、資産運用で複利を生まない。投資する価値があるのか」と、疑問を抱くかもしれません。確かに、金への投資は、「インカムゲイン」がありません。期待できるのは、「キャピタルゲイン」のみですが、私は、インカムゲインとキャピタルゲインを併せた利回りで判断すべきだと考えます。

マネックス証券は、04年1月〜24年1月の20年間、毎月1万円ずつ金に投資した場合、20年後には累計240万円の投資額に対し、金の評価額は663万円になったというシミュレーションデータを公表しました。つまり単純計算では、年平均約9%の利回りとなり、ほかの投資対象と比べても、現行の運用成績は優れていると言えます。

金を投資対象とした金融商品として、ポピュラーなのが「純金積立」。運用成績が向上しているので、人気も再燃しているようです。毎月一定額の純金を購入して、積み立てていくもの。月1000〜3000円の少額からでも始められます。積み立て型金融商品なので、金の一括購入に比べると、長期になればなるほど、「ドルコスト平均法」によって価格変動リスクが平準化され、安定した利益を得やすいでしょう。

純金の現物を自分で保管する必要がなく、盗難などの心配もありません。投資の初心者には、向いている金融商品ではないでしょうか。ただし、口座管理料や手数料といった保管コストを、運営会社に支払わなければならないので、そうしたコストも織り込んで、実質利回りを算定しましょう。

金関連の投資信託や金現物ETF(上場投資信託)で、新NISA成長投資枠の対象となっているものもあります。新NISAは、利益への非課税という大きな魅力があるので、投資枠に余裕があるのなら、利益が原則課税対象となる純金積立よりも、金関連の投資信託を優先して、利用したほうがいいでしょう。ただし、新NISAは、売却益と売却損を相殺する「損益通算」が使えないので、利用するなら、長期運用を前提として考えましょう。

金の価格は、株や債券などの投資資産の価格とは、異なった値動きをするのが特徴。そこで、金は、メインのアセットの価格下落時に、リスクヘッジとしても役立ちます。

例えば、8月の日経平均株価の大暴落、大暴騰のように、株式市場が荒れ模様になったりすると、金の保有が、効果を発揮することもあるでしょう。資産のポートフォリオとしては、全体の10〜20%程度を目安に金関連に投資するのがお勧めです。

もっとも、せっかく金に投資するのなら、「一石二鳥」の利益を追求してもいいかもしれません。金を自宅で保管する場合、「インゴット」を金庫に入れておいても味気がありません。それよりも、金のジュエリーを身につけたり、「金無垢の仏像」など金でできた宝飾品をインテリアとして眺めたりしたほうが、毎日の生活が楽しくなるでしょう。さらに、金製品を手放すときに、「値上がり益」まで得られたら、言うことなしではないでしょうか。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年9月13日号)の一部を再編集したものです。

(構成=野澤正毅 図版作成=大橋昭一)
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