その美しさや華やかさから、さまざまな装飾品や工芸品の素材として古くから愛されてきた純金。現代では投資対象として注目を集めているが、その理由は何か。資産運用のプロが解説する。
積まれた純金の棒
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有史以来人々を魅了する金が無国籍資産であり続ける理由

金は近年、大幅に値上がりしています。投資対象としても再び脚光を浴びているのを、ご存じの人も多いのではないでしょうか?

金の国際価格は1980年代以降、長期低迷が続いていましたが、2000年に入って急に上昇し始め、現在まで右肩上がりの傾向が続いています。

日本国内の場合も、金の1グラム当たり平均小売価格の推移を見ると、04年4月には1528円だったのが、24年4月には1万2720円と、なんと20年で8倍以上にもなっています。では、金の価格がなぜ、ここまで高騰しているのかを、検証してみましょう。

まずは、資産としての金の性質を考えてみましょう。金は、特有の金色の輝きを放つ「貴金属」として有史以来珍重されており、仏教でも、「五宝」「七宝」の一つに数えられています。

純金(金の含有率99.9%以上)は化学反応に強く、基本的に錆びたり、溶けたりしません。ダイヤモンドなどと違って、火災にも強く、文字通り「永遠の輝き」を保てるのです。そのため、資産として、長期保管に適していると言えるでしょう。

一方で、とても柔らかいので、「金箔」のように加工しやすく、ネックレスやイヤリングといった装飾品、美術工芸品などとして愛好されてきました。近年では変質しにくく、電気伝導に優れているため半導体の接続材料に多用されるなど、工業製品の材料としても一定の需要があります。そうした性質から、金には古今東西、不動の資産価値があると言えるでしょう。

金は、円や米ドル、ユーロといった通貨と違って、世界のどこでも通用する「無国籍資産」。また、少量でも価値があるため、宝石などと同じく、持ち運びしやすい動産の筆頭でもあります。「不動産」とは対極のメリットがあり、さらに、世界市場で一定の取引量があるので流動性が高く、売買しやすいのも長所の一つ。その一方で、希少性が高いという強みもあります。

ちなみに金のこれまでの採掘量は推定17万〜19万㌧、現在の採掘可能埋蔵量は推定約5万㌧で、天然資源としては近い将来、枯渇も懸念されています。現在、金の需要の約3分の1は電子機器などのリサイクルで賄われていますが、金の流通量は今後、増えない可能性が大きく、発行数量に上限があるビットコインなどの「デジタル資産」とともに、価値が目減りしにくい無国籍資産ととらえられているようです。