野村監督からの「30%でもいいから行ってくれ」

野村(克也)監督からは走塁に関して特に技術的なことを言われたことはありません。ただ代走で出ることが多かったので、試合終盤に呼ばれて「このピッチャー、行けるか?」と聞かれることは多くありました。癖を把握しているピッチャーであれば「行けます!」と答え、そうなると野村監督からは「じゃあこのバッターが出たら代走に出すから、1、2球目で盗塁してくれ」などと言われていました。

逆に「このピッチャーはクイックが速いので行けません」という返事をすることもありました。行けないと思ったときははっきり言っていました。2年目の若手が野村監督に「行けません」と断ることは勇気が要ることだと思われるかもしれませんが、「このピッチャーはクイックが○秒です」「この投手は癖がありません」と理由も話した上で「行けません」と答えていたので、野村監督も「そうか」と納得してくれていたようでした。

行けるときでも「70パーセントくらいです」「100パーセント行けます」「行けても30パーセントくらいです」となるべく数字を含めて話すようにもしていましたし、「30パーセントでも良いから行ってくれ」と言われることもありました。

ちなみに「行けます!」と言って失敗したことは一度もありません。

ダルビッシュは走りやすいタイプだった

癖が盗めなかった、盗塁が難しかったピッチャーで真っ先に思い浮かぶのは久保康友さん(元ロッテ、阪神など)と内海哲也さん(元巨人、西武)。久保さんはクイックがとにかく速かった。内海さんのクイックは特別速いわけではなかったのですが、上手くランナーと目を合わせたり、ランナーとの駆け引きが抜群に上手かったです。そういったテクニックに長けていて走りにくいピッチャーでした。

体の大きいピッチャーは癖が出やすくて走りやすい傾向にありましたが、日本ハム時代のダルビッシュ有投手(現サンディエゴ・パドレス)もそんなピッチャーの1人でした。クイックのタイムもそんなに速くなかったので何個か盗塁を決めていますし、走りにくいという印象はありません。でもそれ以前に塁に出ることが難しいピッチャーでしたが。