認知症対策に効くスポーツの種類と意外な活動

認知症への対策として、運動はどのくらい効果があるでしょうか? 2003年に医学雑誌(The New England Journal od Medicine)に発表された論文での数値をご紹介しましょう。

もっとも効果的とされるのはダンス(社交ダンス)です。運動をしていない人を1とすると、危険率は0.24に下がります。ほかに有効なのは、水泳が0.71。

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しかし、そのほかの激しい肉体運動は必ずしも効果があるといえず、たとえば登山は危険率が1.55。つまり、「平均的な行動をする人よりも認知症の危険が55%増す」ということです。

これは、「自然のなかで歩く」という行為だけをとれば、脳を刺激して認知症の対策になるけれど、それ以上にケガをして歩けなくなって、結果的に認知症になるリスクが高いことが考慮されているわけです。それほど山道は、ケガのリスクが高いということです。

そのほか、サイクリングは、2.09という高い危険度。サッカーや野球などのチームスポーツは、意外にもほとんど認知症対策としての効果はありませんでした。

多くのスポーツが「効果なし」とされるのに対し、ごく普通の「家事」は認知症を発症する危険率を0.88に低減させます。散歩はさらに発症リスクを0.67に低減させます。

激しい運動をすれば酸素を大量に消費する

高齢になると、強めの運動をして得られるメリットより、ケガによって動けなくなるリスクのほうが大きいことは、別の記事でも説明しました。

大ケガによって動けなくなることで脳の機能が低下するリスクに加え、関節炎や筋肉痛など、よくある軽度の症状が長引くこともあります。

さらに老化防止の研究から指摘されているのは、激しい運動をすれば酸素を大量に消費することです。酸素を消費すればするほど体内で活性酸素が増え、体の細胞が酸化することになります。細胞の酸化とは、すなわち老化です。

だから、若いときに激しい運動に打ち込んでいた人は、意外にも長生きしないことがよくあるのです。まして高齢者の場合には、逆効果にしかならないのが現実だということでしょう。

もしも運動をするなら、「歩く」くらいが健康にもよく、若返りにもちょうどいいのです。これにさまざまな種類の知的活動を組み合わせて運動をする人ほど、認知症になりにくいという調査結果もあります。