インサイト発見能力を鍛錬する方法

実際に商品を考えて・作って・売るというプロセスを経る以外にも「売れている商品がなぜ売れているのか」を考えることによりインサイト発見能力は鍛錬可能だ。

資料や記事だけでその商品・サービスを知るのではなく、実際に自分が顧客の一人として利用をするということも積極的に行うべきだ。この鍛錬と実務を通じてインサイト発見能力は鍛錬することは十分可能だ。

高級ブランドはなぜ売れるのか、効果がないサプリはなぜ売れるのか、なぜ人々は投げ銭に金を使うのか、なぜ企業は脱炭素に取り組むのか、このような個人・法人の行動理由を考えることによりインサイト発見能力は向上する。

一点注意点だが、ユーザーインタビューを行うと人々はよく嘘をつく。「なぜ投げ銭をしているのか」という問いに対して全く知らない人に自分の恥ずかしい感情を含めてさらけ出すのは必ずしも愉快なことではない。

そうすると取り繕ってしまう。これを実際の行動要因と解釈することは危険だ。

建前だけを集計すると、人間というのはなんと倫理的であり素晴らしい生き物だろうと思えてしまう。

そのような建前の感情だけに注目した結果、寄付型クラウドファンディング、教育、地域創生、医療、過疎地域における取り組みのような事業で失敗に導かれた事例は非常に多い。

インサイトは“必ず見つかる”と考えて探索する

メディアで語られていたり、インタビューで簡単に聞き出せたりする言説は建前と割り切る必要がある。

また、インサイトは“必ず見つかる”と考えて探索しなければ見つけることは難しい。これは新規事業のあらゆるプロセスにおいてそうであるが、検証して少し難しければやめてしまうという考えで進めるならほとんどの新規事業を実行出来ないことになる。

中村陽二『インサイト中心の成長戦略 上場企業創業者から学ぶ事業創出の実践論』(実業之日本社)

表面的なユーザーインタビューを3件行って「可能性がなさそうでした」と結論付けることは極めて容易い。「別の質問をしてみたらどうだろう」「別のアイデアをぶつけるとどうだろう」と様々な角度からインサイト発見に務めなければインサイトは見つからない。

多くの人が事業機会を求めており、そのためにはインサイトが必要となれば簡単に見つかることはそもそもない。

新規事業はそもそも困難であり、不確実なものだ。それを「難しいことが見つかった」「不確実性を含む」という理由で退けていては、全てを実行出来ないということになる。

難しいが・不確実だが、克服をするという意思が土台にある必要がある。

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