推進の理由は「少子化」と「教育ニーズの多様化」

今回の意見交換会で県教委は、“共学化を推進”する理由について、「少子化」と「教育ニーズの多様化」を挙げました。具体的には、「共学化を進める背景には少子化があり、教育ニーズの多様化に合わせて教育改革が必要だ。多様な学びの選択肢を用意することが大切」とのこと。

教育のニーズが多様化していることを認め、個々人に合った進学先の選択肢を用意しなければいけないという主張には、大いに同意しますが、その手段は果たして埼玉の県立高校のうち、たった8%ほどしか占めない男女別学校を排除し共学化することが最適解なのでしょうか。

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生徒たちからは「選択肢を用意するのならば、共学と別学の選択肢があっていいのではないか」「公立で別学の選択肢が確保されていることが、多様性のある社会の貢献になるのではないか」という声がありました。

また、浦和高校で開かれた意見聴取会や、県実施の「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート」でも、保護者らから「別学と共学にそれぞれ良さがあり、選択肢があることが大切」という意見があがっています。

「選択肢を用意する」としながらも、男女別学という選択肢を無くす施策に疑問を持っている人は少なくないという印象です。

この疑問に対し、県教委は「男女別学と共学の選択肢があることを否定しているわけではない。性別や住む地域によって、“学びの選択肢が変化してしまうこと”が見過せない」とし、「共学に行きたかったが、学力に見合った学校が別学なので別学を選ばざるを得なかったという声もあった」という例を挙げました。

しかし、今ある男女別学という選択肢を削除し、共学に統一することで、地域による学校の選択肢の差を無くすということは、多様な教育ニーズに合わせて選択肢を用意することと逆の動きになってしまうのではないでしょうか。また、「住む地域によって学びの選択肢が変化してしまうことが見過ごせない」としながらも、言及するのは男女別学の存在うんぬんのみで、偏差値70超の高校が浦和大宮エリアに集中している点についてはスルーされているというのが不思議でなりません。