新築の手続きに手いっぱいでリノベまで対応できない

なぜ、大規模修繕や模様替えの確認申請手続きがストップしそうなのか? それには大きく3つの要因があります。

第一に、新築の手続きの変更により、自治体や指定確認検査機関が、新築対応の業務がかなり逼迫し、既存建築物に対応できない状況に陥ることが予想されるということです。

2025年の4月には、「4号特例」の縮小により、新築は構造審査が必要になります。そして同時に、改正建築物省エネ法も施行されます。これにより、新築時には、確認申請と同時に、「省エネ適判」という省エネ基準への適合判定の手続きが必要になります。「省エネ適合判定通知書」がないと、建築確認はおりません。これまで、住宅では「省エネ適判」は不要でしたが、4月から住宅も必要になります。

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通常、「指定確認検査機関」と「省エネ適合判定機関」は、同じ会社が行っています。そのため、指定確認検査機関等は、この2つの変更で、新築の手続きの負荷がかなり増えます。

新築においても、確認申請手続きが停滞し、着工できるまでかなりの時間がかかることが予想されています。

「どこを補強するか」の判断基準が決まっていない

第2に、既存住宅の大規模修繕や模様替え手続きに関するマニュアルの整備が遅れており、指定確認検査機関の体制整備もまったく進んでいないという問題です。

新築住宅の確認申請手続きにおいては、ルールが明確になっており、指定確認検査機関等の担当者が判断に迷うことはそれほど多くありません。ところが、既存住宅については、現行法に適合していない場合、例えば基礎の耐力が足りていない際にどの程度の補強が必要なのか等、どのような改修をもって適合とするのか、審査時の判断に困ることが多くなります。

そのために、判断基準を明確にするマニュアルが絶対に必要です。特に、民間の指定確認検査機関の場合は、明確な判断基準がなく独自の判断で行うと、国土交通省から処分を受けるリスクがあります。その判断基準が示されない状況での施行になりそうなのです。

そして、指定確認検査機関は、いままで新築の確認業務ばかりを行ってきましたから、既存住宅の大規模修繕等について、経験・知見を積んでいる確認検査員が圧倒的に足りていないのです。

判断基準となるマニュアルが示されず、十分な経験のある確認検査員が足りていないのです。それでなくても、新築の確認業務の負荷増大でパンク状態になると予想されています。そのため、既存住宅の大規模修繕等の確認申請業務に積極的に対応できる指定確認検査機関がどれくらいあるのか、はなはだ疑問です。