築40年超も最新の住宅に生まれ変わる「フルリノベ」

断熱・気密フルリノベとは、通常の水回りやクロスの張り替え等のリフォームにとどまらず、断熱・気密性能と耐震性能の向上を伴う改修工事のことを言います。一般的には写真のように、柱・梁等の構造材をむき出しの状態(スケルトン状態)にして、耐震補強・シロアリ対策、床(基礎)・壁・天井(屋根)に断熱材を十分に施し、同時に気密処理も行って気密性能も確保します。

築40年以上の築古の既存住宅でもフルリノベにより、一般的な新築住宅よりも耐震・断熱・気密性能をはるかに高性能にできるということを知らない方は、意外にまだ多いようです。

【図表】スケルトンフルリノベーションの事例
出典=プレイスコーポレーション

古い家を解体して新築するのに比べると、解体費がかからないことや、新築よりも工事費が安いため、数百万円程度安く収まります。

さらに国や自治体の手厚い補助金も活用できるため、既存住宅を解体して建て直すのに比べれば、建物規模や条件にもよりますが、トータルでおおむね600万~700万円程度安い費用で高性能住宅での暮らしを実現することができます。

そのため、高性能住宅の新築を断念した層を中心に、近年、中古住宅購入+断熱フルリノベを選択する方が増加しており、貴重な住まいづくりの選択肢になっています。

これまでは不要だった「確認申請」が義務に

ではなぜ、来年度の法改正で、フルリノベが難しくなるのでしょうか? 

建物の新築や大規模修繕や模様替えを行う場合、確認申請が必要です。申請は、自治体や民間の指定確認検査機関が行います。

ただし、2階建て以下の小規模な木造建築物を対象に、建築確認で構造審査を省略する「4号特例」という制度があり、従来、新築では構造審査が不要でした。リノベにおいては確認申請自体が不要でした。

それが今回の改正で、この「4号特例」の対象建築物が大幅に縮小されます。新築は構造審査が必要になります。

また、既存戸建住宅のフルリノベ、つまり大規模修繕や模様替え(具体的には主要構造部:壁、柱、床、梁、屋根、階段の過半の修繕工事等を行う場合)、でも確認申請が必要になります。

この改正で、既存住宅の場合は、現行法に適合していない箇所があれば、リノベを考えている箇所でなくても、その部分も現行法に適合させる改修工事が必要になります(既存遡及に関してはかなりの部分で緩和あり)。

そして、それ以上に問題なのは、とても大きな改正であるのにもかかわらず、制度設計が準備不足のままでの見切り発車になりそうだということです。そのため、少なく見ても6カ月間程度は、戸建住宅で大規模修繕や模様替えの確認申請手続きは、ほぼできない状況に陥るのではないかと言われています。