「家の耐震工事」を検討している人はピンチ

今年1月1日に発生した能登半島地震では、全壊した住宅戸数は6038戸、半壊は1万7944戸と甚大な被害が出ています。南海トラフ地震への不安も高まる中、住宅の耐震化は喫緊の課題のはずです。

地震で被害を受けた総持寺祖院=2024年1月14日、石川県輪島市門前町
写真=時事通信フォト
地震で被害を受けた総持寺祖院=2024年1月14日、石川県輪島市門前町

内閣府は、住宅の耐震化が順調に進んでいないため、2009年に住宅の耐震化に対する国民の意識についての調査を行っています。この調査で、耐震補強工事の実施予定がない理由として、「お金がかかるから」がダントツの1位になっています。耐震補強工事の推進のためには、いかに費用負担を軽減するかが重要なはずです。

ところが、今回の法改正で、大規模な修繕や大規模な模様替えを行う場合、建築確認申請が必要になります。すべての耐震補強工事で確認申請が必要になるわけではありませんが、一定以上の本格的な耐震補強を行う場合は必要です。

当然、今までよりも手間も費用も余分にかかることになります。なかなか進まない耐震補強工事がよりいっそう進まなくなる要因になりそうです。

中小工務店や建材メーカーの倒産が増加する

工務店業界にとっても死活問題になりそうです。

ここ最近、新築住宅の着工戸数が大きく減少しています。もともと新築住宅着工戸数の減少は予想されていたことですが、予想を上回るペースで減少しているのです。中でも、注文住宅の着工戸数の減少はとても大きくなっています。これは、建築コストが上昇しているのに対し、家計の住宅購入に利用できる資金が伸びていないためと指摘されています。

注文住宅建設が中心の工務店にとっては、かなり深刻な状況です。そのため、多くの工務店は、生き残りをかけて、新築からリノベーションにシフトを進めています。この状況下で、リノベーションの受注をストップせざるを得なくなれば、中小工務店や建材メーカー等の倒産が一気に増加する可能性があるのです。

一方、国や自治体も、近年、新築よりも既存住宅の省エネ化に力を入れています。巨額の予算措置を行い、断熱リノベーションにかなり手厚い補助制度を用意しています。今回の法改正は、アクセルを踏み込みながら急ブレーキをかけるようなもので、政策な整合性がまったくとれていないように思われます。