適度な運動が疲労回復効果につながることも

②運動タイプ

運動タイプの休養は、ストレッチしたり、ウオーキングをしたりと、体を軽く動かすこと。「運動が休養になるとは、矛盾している」と感じるかもしれませんが、適度な運動をすれば、血液やリンパの流れが良くなるので、体内に酸素や栄養が行き渡ったり、体内の老廃物が除去されたりして、疲労回復が進むわけです。血行を促す「入浴やサウナ」も、運動タイプの休息になります。

例えば、アスリートが、激しい練習の終了後も少しランニングをしたり、ストレッチをしたりと、軽い“運動”をあえて行っているのは、疲労を残さないようにするためです。スポーツやサウナが好きなビジネスパーソンなら、会社帰りにフィットネスジムに行くと、仕事の疲れが取れることをご存じではないでしょうか?

とはいえ、「好きなスポーツだから」と、疲労困憊するまで打ち込んでしまっては本末転倒です。休養が目的であれば、汗を流して軽い疲労感を覚えたら、そこで運動は切り上げましょう。

高齢者やケガで動きにくい人も、じっとしているよりは、無理をしない範囲で軽く体を動かしたほうが、ストレスを解消でき、疲労がたまりません。体が適度に疲れたほうが、ぐっすり眠れます。とりわけ、高齢者は、筋力や運動能力が低下しやすく、筋肉量が減って身体活動に支障が生じる、「サルコペニア」という状態に陥りやすいのですが、軽い運動を続けていれば、その予防にも有効です。

運動する時間がなかなか取れない多忙なビジネスパーソンでも、例えば、電車を一駅前で降りて会社や自宅まで歩いたり、オフィスビルではエレベーターを使わずに階段を昇り降りしたりといった具合に工夫すれば、日常生活で軽い運動を取り入れることは可能でしょう。掃除や洗濯、炊事、買い物といった家事も体を動かすので、軽い運動になります。

腹八分目が長寿の秘訣

③栄養タイプ

栄養タイプの休養といえば、皆さんは、「疲労回復に役立つ食事をすることか」と思うかもしれません。しかし、休養学では、「食べすぎないこと」を重視します。

不必要な栄養摂取を控えるという意味で、「引き算の栄養学」とも呼んでいます。というのも、例えば、「疲労やストレスの解消」になると思って、「お酒のガブ飲み」や「スイーツのドカ食い」をしたりすると、かえって体に重い負担をかけてしまうからです。

「腹八分目が長寿の秘訣」という先人の教えは真理で、エサを満腹になるまで食べるマウスと、腹八分目まで食べるマウスを比べた実験では、腹八分目のマウスのほうが約1.5倍長生きしました。

具体的な栄養タイプの休養としては、「ご飯のおかわりを我慢する」といった食事量のセーブ、小腹が空いたら「体が温まるお湯」を飲んだりして凌ぐこと、消化に良いおかゆといった「胃腸にやさしい食べ物」を摂ることなどが挙げられます。また、「断食」といった食事制限も引き算の栄養学の一つと考えられます。

引き算の栄養学を勧奨するとはいいましたが、ミネラルやビタミンのように日常生活で摂取しにくい栄養を、食事やサプリメントで補うことは、もちろんかまいません。

疲労回復の働きがあるミネラルでは、鉄分や銅、亜鉛、マグネシウムなどが不足しがちです。ビタミンでは、とりわけ、体内の糖分やたんぱく質、脂質を分解して、エネルギーに転換するのに必要なビタミンB群が、疲労回復には欠かせない栄養素なので、積極的に補給するようにしましょう。

市販のドリンク剤でも、ビタミンB群が手軽に摂れます。しかし、疲労感や眠気を感じにくくする「マスキング」の作用がある「カフェイン」も含まれていることが多いので、注意しましょう。

後編へ続く)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年6月14日号)の一部を再編集したものです。

(構成=野澤正毅)
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