トヨタでは“整列”と“整理”を区別している

トヨタグループでは、「整理ができない人」は「仕事ができない人」と同義語で使われることがあります。「整理ができない人」=「判断ができない人」=「仕事ができない人」と評価されてしまうのです。このような発想のもとになっているのが、「整理」についての考え方です。

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みなさんは乱雑に散らかった机のまわりを「整理しなさい」と言われたら、どのように対応しますか? 多くの方が、ひとまず、寄せて、まとめて、並べて、重ねて……と対応するはずです。しかし、トヨタでは異なります。トヨタでは、机の上などに散らかっているものを綺麗に整える行為が“整列”、それに対して「ものごとの要否を判断して、不要なものを捨てる」行為が“整理”である、と明確に区別しています。

そして、もちろん整列と整理では、整理を重視します。ものがなければ、散らかることもないし、「探しもの」に費やす時間もなくなるからです。もちろん整列も大切ですが、不要なものを見栄えよく並べてもあまり意味はありません。できる限りものを捨てていくという発想は、トヨタにおける“カイゼン”でよく使われている「ECRS(Eliminate, Combine, Rearrange, Simplify)の4原則」のうちの「Eliminate=なくす」と同じ考え方です。

「捨てる=大きな決断」と思ってはいけない

STEP2 「捨てられない‼️」を乗り越える

世の中には「物を捨てるのが苦手なんだよね~」という方がいます。「捨てる」という判断にはリスクもともなうため、ついつい判断を避けてしまいたくなるのだと思います。この「捨てられない‼️」をどうやって乗り越えればいいのでしょう。

トヨタでは、次のような取り組みを実践しています。

①捨てる基準(判断基準)を定めて、一大決心を避ける

誰しも、一大決心や大きな決断は、心理的な負荷が大きいものです。一品一品、要否を検討し、いちいち「捨てるぞ!」と決心や決断を繰り返していては、誰だってすぐ心理的に疲労してしまいます。そのため、捨てるという決断の心理的な負担を極力少なくすることが1つのポイントになります。

できれば機械的な判断で捨てるか残すかを決めていけるような仕組みをつくることがおすすめです。具体的には、「再購入やつくり直した場合に○○円以下で済むなら捨てる」「最終版のデータ以外は捨てる」というようにあらかじめ判断基準を定めておき、その判断基準でふるいにかけて、捨てるか残すか振り分けていくようにするのです。

機械的に捨てるか残すかを振り分けることができると、決心や決断が一切不要となり、作業はとてもラクになり、継続性も向上します。