それでも回転寿司を続ける理由

その後、2000年代に入り「SARS」「MERS」といった感染症が流行した際は、飛沫接触や直接接触による感染を防ぐため、寿司をカバーで覆う取り組みに着手。開発に時間がかかったものの、2011年に寿司を覆い、衛生と鮮度を両立する「抗菌寿司カバー鮮度くん」が誕生した。

また、2023年に一部の迷惑行為が回転寿司業界を揺るがす中、いち早く「新AIカメラシステム」を発表し、回転レーンを継続したのも記憶に新しい。

撮影=プレジデントオンライン編集部
くら寿司の寿司レーン上部に設置されている不正行為を検知するカメラ

新AIカメラシステムの仕組みはこうだ。まず、回転レーンの寿司を覆う鮮度くんが不審な開閉をした際、本部へアラートで通知。本部担当者が該当店舗へ連絡すると、異常を検知した皿をレーンから撤去し、アラートが出た席の客へ声がけを行う。

こうした仕組みが功を奏し、コロナ禍で2割ほどに落ち込んだという客がレーンから商品を取る比率は、コロナ前の5割程度まで戻りつつあるという。迷惑行為騒動があったことを考えると、驚異的な数値だ。裏を返すと、それだけ来店客が「回転」というエンタメ性を求めているということでもある。

「運営の効率だけを考えると、レーンはなくして注文品だけをお出しする方が良いかもしれません。ただ、回転寿司の特徴は、何よりエンタメ性です。今やテークアウトでもおいしいものがあふれる中、わざわざ外食をするのはなぜか。

われわれは、レジャーに行くようなワクワク感や、目で見ておいしそうだなと感じたものを、手に取って食べる楽しさがあるからだと思っています。そうした記憶に残る外食体験は、回転レーンならではの強みであり、今後も断固維持していきます」

抗菌寿司カバー鮮度くんも製造管理システムも、AIカメラもすべては客にワクワクしてもらうため。大手回転寿司チェーンで唯一回転寿司を続けている、いや続けられている裏には、飲食業界で最先端と言えるテクノロジーがあった。

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