利用者を惹きつける経営哲学

その独自の哲学を愛するファンは多い。

米市場調査会社のJ.D.パワーが実施した「2024年北米航空会社顧客満足度調査」では、エコノミー/ベーシックエコノミー部門のエアライン11社中、1位に輝いた。1000点満点中685点を獲得し、2位デルタ航空の651点、6位アメリカン航空の611点、10位スピリット航空の507点などに明確な差を付けた。

米公共ラジオ放送のNPRは、「サウスウエスト航空が1970年代に初めて離陸したときから、その型破りな搭乗手続きは売り込みの一部だった」と振り返る。

創業者のハーバート・ケレハー氏は、70年代のTVコマーシャルに自ら出演。オープンシート方式によるスムーズな搭乗と、迅速な離陸の大切さをアピールした。

「私たちの飛行機はボーディングブリッジに接続すると、お客様を乗せ、10分以内に離れます。空へと迅速に向かうほど、目的地に着くのも早くなる。私たちはそう考えます」
「サウスウエスト航空では、お客様に地上ではなく、空中で過ごしていただきたいのです」

加えて、ビジネスクラスなどの座席クラスという考え方が存在しないこともポイントだ。サウスウエストとしては、座席の管理や変更にかかる手間とコストが削減される。このように、オープンシート方式はサウスウエスト航空の運営に多大なメリットをもたらしてきた。

写真=iStock.com/Joe Hendrickson
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ビジネスクラスも、ファーストクラスもない

なお、平等主義のサウスウエストにも、例外的に有料の優遇措置は存在する。

追加料金を払うことでAグループ1~15番を発券できる「アップグレード搭乗」と、通常のチェックイン時間よりも前からチェックイン可能な「アーリーバード・チェックイン」だ。マイレージ会員向けの「Aリスト」プログラムでも優先搭乗が可能だ。

だが、これらは席取り競争に有利だが、なおも指定席制ではない。また、座席クラスの違いも存在しない。サウスウエストをよく利用していたという米ミネアポリスの64歳男性は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、ファーストクラス独特のいやらしさを感じずに済むことがサウスウエストの良さだったと語る。

「もしかすると私が年老いた社会主義者になってしまっただけなのかもしれませんが……」と前置きしながらこの男性は、「自分の席に向かう途中、(ファーストクラスに座る)立派な人々の間を通り抜ける必要がないのが気に入っていましたね」と振り返る。

なぜ、いま廃止するのか

好評を博してきたユニークな座席システムを、なぜ変更する必要があるのか。ニュースリリースでこう説明する。「調査の結果明らかに、サウスウエストの顧客の80%、潜在顧客の86%が、指定席を好んでいるという結果が出ました」

この説明は、確かに一理ある。一家で並んで座れる席を予約したい家族連れを中心に、オープンシート方式への不満が聞かれることはあった。搭乗順が終盤になれば、まばらな空席しか残っておらず、離ればなれで座ることになるためだ。