「コストコで金の延べ棒が買える」とSNSで話題に

今年5月から7月まで、金価格は高止まりでほぼ横ばいの動きとなった。7月末、中国人民銀行の金保有量は7280万トロイオンスで横ばいだった。高値警戒で中国は金の追加購入を控えていたとみられる。逆に、価格上昇にもかかわらず金を売却していない。ドル依存を引き下げようとする中国の意思が読み取れる。

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山東黄金鉱業など中国の産金企業は、アフリカ、南米、オーストラリア、カナダ、中国国内などで鉱山を取得している。中国の個人投資家の金保有動機の高まりも、国有鉱山企業などの資産取得の要因だろう。

2022年春先以降、世界的な物価の上昇もあり、先進国の投資家も金の保有を重視するようになった。わが国でも、金を購入する個人は増加した。足許、米国ではSNS上で、“コストコで金の延べ棒が買える”といった投稿は増えた。8月上旬、米国など世界的に株価が急落してリスクオフが進む場面で、ニューヨーク市場の金先物価格は1トロイオンス2500ドル台を上回った。

“もしトラ”で世界経済が混乱する恐れも

今後の注目点の一つは、米国をはじめ欧米主要国の政治リスクだ。11月の米大統領選挙の結果にもよるが、インフラ投資、半導体などの補助金、国防関連の支出増で連邦財政は悪化する可能性は高い。

もしトランプ氏が当選すると、米国社会の分断は一段と深刻化する恐れもある。トランプ氏は、「FRBの金融政策に大統領が発言権を持つべき」と主張し、当選の場合には利下げを強要するとみられる。それも、インフレ圧力を高める恐れがある。

また、ハリス氏が当選した場合でも、移民などをめぐる保守派とリベラル派の対立は深まることも考えられる。大統領選挙を経て、米国の政治、経済、安全保障に対する不安は高まり、ドルが減価するリスクが上昇する可能性はあるだろう。

それによってドルが減価すると、米国の双子の赤字(財政赤字と経常赤字)は拡大し、経済成長率は低下することも想定される。その場合には、世界経済の下振れリスクも上昇するはずだ。