中国・インドなどの新興国が買い漁っている

足元で、金価格の上昇が一段と鮮明化している。8月9日まで、シカゴ・マーカンタイル取引所の金先物価格は約18%上昇した。同じ期間、わが国で人気の“オルカンETF”の基準となるMSCIのオールカントリー株式インデックス(ACWI、ドルベース)は約8%、米ナスダック総合指数は12%の上昇だったことを見ると、金価格の上昇の勢いがわかる。

中国共産党20期3中総閉幕 改革深化の決定
写真=新華社/中国通信/時事通信フォト
北京で2024年7月15日から開かれていた中国共産党第20期中央委員会第3回総会(20期3中総)は18日コミュニケを発表して閉幕した。ひな壇に座る(左から)李希、蔡奇、趙楽際、習近平、李強、王滬寧、丁薛祥ら

7月下旬から8月上旬、日米など主要国の株価は急落した。その後、米国などで株価は小幅に持ち直したが、その間も金価格は高値圏で推移した。その背景には、金に対する根強い需要がある。主な買い手は、中国やインドなど新興国の中央銀行や個人投資家だ。わが国など先進国でも、金の保有を検討する人は増えている。

金価格の堅調な展開は、今後も続く可能性が高そうだ。米国や欧州で、右派と左派、保守とリベラルの社会の分断はかなり深刻だ。総選挙後の英国では、移民問題で大規模な暴動が発生している。

また、長い目で見たドル離れや地政学リスクの高まりなどで、世界的に金融市場は不安定化する懸念やインフレが再燃するリスクもある。価値が最も安定している金に対する需要は今後も高まることが想定される。当面、価格の上昇は続きそうだ。

リーマンショック以降、「金地金」のニーズが増加

基本的に、金価格が上昇する背景には、需給バランスの変化がある。需要が増える一方で供給は増えない。価格上昇の期待が高まることで、ヘッジファンドなどの投資家は金を購入し価格上昇に勢いがつく。

世界的に金の需要は増加傾向にある。金に関する情報提供や分析を行う“ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)”によると、2024年4~6月期、世界の金需要は2000年以降で最高水準に達した。WGCは主な需要を宝飾品の製造、半導体や電子部品など産業用、金地金きんじがねや金貨としての保有、ETF(上場投資信託)による金保有、中央銀行による購入などに分けている。

インドや中東などの宝飾品ニーズは時期によって多少の増減はあるものの、趨勢としては右肩上がりの基調を維持している。リーマンショック後、金地金や金貨としての保有は増加基調にあり、中央銀行の保有も増加した。