脱「米ドル依存」の動きは今後加速するか
米国の政治不安は、欧州のポピュリスト政治家が勢いづくきっかけにもなるかもしれない。極右や欧州懐疑派の政治勢力が台頭するフランス、オランダ、そしてドイツなどで移民排斥や、ロシアに譲歩し天然ガスの安定調達に支持が集まることも可能性としては考えられる。
トランプ氏のように、政治が金融政策にも介入すべきとの考えも高まりやすい。仮にそれが現実になると、EU、ユーロからの離脱などをめざす世論が欧州諸国で高まるかもしれない。
米国の社会分断の深刻化は、ウクライナ、中東、台湾情勢にも波及する可能性がある。ウクライナ紛争が長期化すると、欧州のエネルギー調達コストは増加し、世界的にも天然ガスの需給が逼迫するかもしれない。中東情勢次第で、原油や天然ガス輸送の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖をイランの革命防衛隊がほのめかすことも考えられる。
米国の政治リスクを考えると、再度、世界的に物価上昇懸念が高まる恐れは残る。米欧の政治情勢が不安定だと、主要投資家が中長期的な視点でリスクをとることも難しい。AI関連企業の決算内容で、相場が再度調整することも考えられる。当面、金の保有を増やす中央銀行や主要投資家が増える可能性は高いだろう。

