テレビ局間の明暗

次に8月9日までの競技中継の見られ方から、テレビ局間の明暗を分析してみよう。

GP帯(夜7~11時)放送の個人視聴率を比較すると(以下同)、NHKの平均が6%弱と他局を大きく引き離した。

スイッチメディア「TVAL」データから作成

2位はNHKの4分の3にとどまったTBS。

3位は7割強のテレビ朝日。4位がテレビ東京で6割強。ほぼ同じ割合で5位となったのが日本テレビ。そして最下位はNHKの半分に及ばなかったフジテレビだ。

数字の多寡は、各局がどの競技を中継したのかによる。

NHKは一番人気でかつ、負けてしまったものの日本が熱戦を繰り広げたバレーボールの生中継を多く放送し、平均値を押し上げた。

一方で民放は1局あたりの中継が極端に少ない。

ほぼ毎日順番に担当しており、1局が期間中に生中継したのは数日に過ぎない。その少ない日数にどんな競技を受け持ったのかが明暗をわけた。

●年層とテレビ局の関係

ただし年層別の各局数字(GP帯)を見ると微妙な問題が見えてくる。

確かにNHKはトップだったが、3~4層(男女50歳以上)で他局に大差をつけた結果だったことが浮かび上がる。2層以下(男女49歳以下)の各層では、テレビ局間の差は大きくない。

例えば個人全体でNHKの半分に及ばなかったフジ。

コア層(男女13~49歳)では、両局の差は6割に縮み、19歳以下では7割となる。つまりコンテンツとして見ると、オリンピックは中高年のものとなっており、若年層ほど関心が薄れている。

これに対してIOC(国際オリンピック委員会)は若者対策に力を入れている。

スケートボード・BMX・ブレイキンなど新競技を正式種目に組み込んでいるのだ。それでもテレビ同様、オリンピックにも若者離れの波が押し寄せていることは否定できない。

●各局分担の仕組み

実はオリンピックは特殊な仕組みで放送されている。

NHKと民放連で作るJC(ジャパンコンソーシアム)が、夏と冬の大会をセットで放映権を購入している。今回の金額は、22年の北京冬季五輪と24年のパリ夏季五輪の組み合わせで440億円に上った。これをNHK7割程、民放3割程で分担している。この民放3割は東京キー5局で分担しているので、1局あたりだとNHKの10分の1に満たない負担額となる。

これが生中継に如実に表れる。

NHKは放送が毎日あり、しかも人気競技の中継が多い。視聴習慣がつくことも含め、好調な視聴率となるゆえんだ。

ところが7対3割合の分担金を反映したくじ引きで担当中継が決まる民放各局は、運次第で人気競技を扱えない。しかも今回で言えば最下位に沈んだフジは、人気競技がバスケットボール女子の第3戦くらいで、良い時間に放送したにも関わらず、個人視聴率2%前後に終わった枠が3つもあった。

実は五輪中継は、毎回NHKの一人勝ちが続いている。

民放は高騰する放映権料に対して、視聴率は振るわない。結果として2012年のロンドン大会以降、赤字が続いているという。それでもJCから降りられないのは、オリンピックという国民的イベントを放送するプライドの問題と、生中継以外の情報やバラエティ番組などで五輪の映像が使えなくなるのは困るという事情からだ。

視聴データから判断すると、同システムはボチボチ見直しが必要と思われる。