スマホでメモをとるのはおすすめできない理由

作品を見ていると、自然と頭の中にアイデアや言葉が浮かんできたり、ふとした疑問や感想がわいてきたりしませんか。それを頭の片隅に残しておきながら、他の作品を見るのは大変です。一つの作品に触発されて浮かんだ言葉は、泡のようにすぐに消えてしまい、次の作品を見る時にはまた別の言葉が浮かんできます。

「あれ、さっきまで考えてたことって何だったっけ? 何かフワッと良いことを思いついた気がするんだけど、うわー忘れちゃった。気になる……思い出せない……」とか考えていると、その後の展示に集中できなくなります。

というわけで、最後まで展覧会を楽しむためにも、感想はなるべくその場で、思い浮かんだ瞬間に、パパッとメモ帳に書き留めておくことをおすすめします。

ただ、展示室内でメモをする時にはちょっとした注意点があります。

撮影可能な展覧会も増えてきたとはいえ、まだ多くの美術館では写真撮影が禁止されています。スマホアプリを使ってメモを取ろうとすると、スマホで撮影しようとしているのではと監視スタッフにいらぬ警戒をされてしまいます。

注意されないまでもスマホを出していると「むむ、撮影しようとしてるのか?」とマークされてしまい、落ち着いて鑑賞できなくなるので、写真撮影OKの展覧会でしか、スマホによるメモはしない方がいいでしょう。

ボールペンの使用は禁じている美術館が多い

「それならメモ帳を持っていこう」という話になるのですが、そこでもう一つの美術館ルール「筆記用具は鉛筆のみ」に注意しなくてはいけません。

ちいさな美術館の学芸員『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』(産業編集センター)

日本では、筆記用具は鉛筆のみとしている美術館が多数派です。なぜかというとボールペンや油性ペンを使うとインクが誤って作品に付いた時に、取り返しがつかないからです。シャープペンシルならいいのかというと、ペン先がとがった金属であること、またボールペンと見分けがつきにくいことから、やはり禁止されている場合が多いです。

メモを取るために、鉛筆も携帯しなければいけないのは、少しおっくうですよね。鉛筆の芯が折れたら困るのでキャップをかぶせておかないといけませんし、ボールペンやシャープペンシルのようにフックがついていないので、メモ帳に引っかけて一緒にしておくこともできません。

でも大丈夫です。鉛筆は、美術館の受付でお願いすればたいていの場合、貸してくれます。最初から「ご自由にどうぞ」と用意してある美術館もあります。積極的に利用してください。

さて、メモを取るといっても難しく考える必要はありません。

作品を見て、引っかかったこと、あとで調べようと思ったこと、特に良かった部分などを箇条書き程度にささっと書くだけで十分です。それだけでも鑑賞の深みが全然違ってきます。上級者コースではありますが、そんな鑑賞方法もあるということを覚えておいてください。

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