定年後に「給与半減」でも仕事があるだけで幸せ

50代の悩みは小さなものです。60代になると、ホワイトカラーの仕事はなく、現業の仕事くらいしかありません。恰好のいい仕事があるのは、上場企業や官僚で出世した人たちや、徳を積んできた人たちです。

現業の仕事でも、興味のある仕事、自分に合った仕事、自分を必要としている仕事を探せばいいのです。たとえば、地域で募集があり、学校の用務員になって、楽しんでいる人がいます。学校では、好きな植栽の剪定をして、子どもたちから「先生」と呼ばれて慕われるのが、うれしくてしょうがないとも。

海外で航空会社のキャビンアテンダントをしていた女性が、食品コーディネーターに転身して、幸せそうにしています。韓国サムスングループで働いていた方が、海外協力隊のシニア版に参加し、海外で自分のスキルを伝えることに幸せを感じています。

お金に困っているのであれば、何でもやりましょう。いまは人手不足の時代です。介護や工事現場、運送業など現業に近いところは、AIで効率化するのが難しく、人手が足りません。たとえば、運送会社は人材募集の年齢を引き上げ、荷物の上げ下げを機械化して、人は運転するだけでいいのです。仕事はあります。

ただし、現業の仕事をするのであれば、悪しきプライドは捨てましょう。過去の自慢話などは嫌われるだけ。職場へ上手に溶け込めさえすれば、逆に好かれることにもなります。

定年後の再雇用で、給与が半減したと不満を言っている人たちがいます。そんな人たちには、仕事があるだけでも幸せだと言いたいです。生産性が上がらないこともあり、温情で再雇用してもらっていることも少なくありません。60代の人こそ、自分のスキルを磨かないといけません。

60 代なら仕事を頑張っても、せいぜい、あと10年くらいでしょうか。自分がこれまでに何をやり残したのか、考え直してみるといいでしょう。そうすれば、楽しくもなるのではないでしょうか。

自分自身の「天命」を知ることが大切です。諦観とでも言いましょうか、自分が選んで歩んできた人生を受け入れることです

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月16日号)の一部を再編集したものです。

(構成=浅井秀樹 図版作成=大橋昭一)
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