なぜ混雑しているのに「みどりの窓口」を閉鎖するのか

今年3月下旬~4月上旬にかけての混雑を受け、JR東日本は5月8日になってみどりの窓口の閉鎖を一時中止すると発表した。同社が2021年に立てた計画では、当時首都圏に231駅、首都圏以外に209駅と合わせて440駅に設置されていたみどりの窓口を2025(令和7)年までに首都圏、首都圏以外とも70駅程度ずつの計140駅程度に減らす予定であったという。

5月8日に発表の時点でみどりの窓口は209駅に設置されているそうで、ずいぶん少なくはなったものの、差し当たりこれ以上数を減らすことはない。

6月4日になってJR東日本はみどりの窓口が閉鎖された川口駅や北朝霞駅など計6駅について利用者の多い日に臨時に復活させると発表した。残る4駅は、南越谷駅、川越駅、久喜駅、北千住駅であると7月4日に公表されている。

7月4日にはさらに、みどりの窓口はあるものの、窓口の数が減らされた蒲田駅や登戸駅、武蔵溝ノ口駅、郡山駅、仙台駅、長野駅など計44駅では利用者の動向に応じて窓口が増設となることも発表となった。

JR東日本がみどりの窓口の閉鎖や窓口の削減を進めた理由は人件費の節減で、2021年当時の報道によれば25億円を見込んでいたそうだ。

長距離きっぷの8割はネットから

国土交通省の「鉄道統計年報」によると、同社が鉄道事業において2021年度に要した営業費は減価償却費、諸税を含めて1兆4890億円で、給与の総額は2330億円であった。

25億円自体は営業費全体の0.2パーセント、人件費全体の1.1パーセントとわずかだが、節減には意味はある。同社を含めて鉄道事業には人件費を含めた固定費の割合が9割前後と極めて高く、輸送需要が減少して変動費が減ったとしても営業費の節減には貢献しないからだ。

今後縮小傾向にあると予想される鉄道事業を今後も持続させるためにも必要と同社が判断したのもある程度は理解できる。

写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

もちろん、みどりの窓口の数を少なくするからには各種自動券売機、特に指定席券売機の機能の向上、インターネットによるチケットレスサービスの拡充が必要で、JR東日本は実際に取り組んできた。

2020(令和2)年度の時点で100kmまでの近距離のきっぷはSuicaといった交通系ICカードでの乗車が大多数を占め、101km以上の長距離のきっぷも全体約80パーセントが各種自動券売機やチケットレスサービスで購入されたものだという。

こう言うとJR東日本は怒るかもしれないが、利用者も別に好きでみどりの窓口を利用しているのではない。各種自動券売機やチケットレスサービスでは対応できない取り扱いが存在するため、みどりの窓口での行列に並ばざるを得ないケースも生じているのだ。