「なんだこれ…」
再び、コックピット・ボイス・レコーダー(CVR)とデジタル・フライト・データ・レコーダー(DFDR)の解析記録をのぞいてみよう。
午後6時28分35秒の機長の「アンコントロール(操縦不能)」という発声。その13秒後に副操縦士が「ライトターン ディセンド(降下する)」と告げる。
機長「気合を入れろ」
副操縦士「はい」
29分05秒
機長「ストール(失速)するぞ。本当に」
副操縦士「はい。気を付けてやります」
29分59秒
機長「なんだこれ……」
「できない。羽田に戻りたい」
日航123便(JA8119号機)は、焼津市の北付近を通過する。
31分07秒 機長「了解。現在降下中」
31分08秒 東京ACC「オーライ。現在の高度をどうぞ」
31分11秒 機長「240(2万4000フィート、7315メートル)」
31分14秒 東京ACC「オーライ。現在位置は名古屋空港へ72マイル(133キロ)。名古屋空港へ着陸できますか」
31分21秒 機長「できない。羽田に戻りたい」
31分26秒 東京ACC「オーライ。これからは日本語で話していただいて結構ですから」
航空機のクルーと管制官とのやり取りは通常、専門的な用語や慣用句を交えた英語で行われるが、東京ACCは深刻な事態だと考え、より分かりやすい日本語でのやり取りに切り替えたのである。それだけ事態は逼迫していた。