大学の学費はかなり効率の良い投資

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の令和5(2023)年版で学歴別の収入を見てみると、20~24歳で大卒は約24万円、高卒は約21万6000円と差があり、最も差が大きい55~59歳では大卒が約49万9000円、高卒が約32万2000円と金額で17万7000円の差があり、大卒は高卒の1.55倍となっている。

これは月間所定内給与なので、賞与等を含めればその差はもっと大きくなる。

労働政策研究・研修機構が発表している「ユースフル労働統計2023労働統計加工指標集」では、学歴別の生涯賃金の推計を示している。それを見ると、男性の場合、大卒は約3億2000万円、高卒は約2億6000万円でありその差は6000万円、女性の場合は大卒が約2億5400万円、高卒が約1億8900万円でその差は6500万円になる。

私立大学の理系学部に行って4年間の学費が500万円かかったとする。大学に行かずに4年間働いた場合の賃金を1500万だとして、その合計2000万円をコストとして考えてみよう。

その2000万円の投資が将来の6000~6500万円になって返ってくるわけだ。もちろん、自宅から通えなかった場合はよりコストがかかるし、割引率を使って現在価値を計算するといったより正確な計算が必要だとしても、かなり効率の良い投資になる。

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大学に行けるような学力がありながらさまざまな事情から高卒で働き始め、大学卒よりも高い年収を獲得できるような場合もあるが、同じ人で考えれば、行けるなら大学に行った方が職業選択の自由度が高まることは間違いない。

日本は大学に行くことによる社会階層の移動が可能

そして、日本では勉強を頑張って大学に行くことで、社会階層の移動が可能だ。

その時、経済的に苦しくても国公立大学には授業料の減免があり、給付型の奨学金もある。大学院以降は貸与型奨学金でも優れた業績を上げれば返還が免除される制度もある。博士課程では研究奨励金として月額20万円が支給される制度もある。

一定の条件があるとはいえ、大学教育の無償化は一部実現されているのだ。

また、いわゆるFラン大学だけではなく、偏差値の高くない大学に在籍している学生全員が学力的に社会の底辺だというわけではない。

文部科学省の「学校基本調査」の令和5(2023)年度の結果を見ると、大学・短大・専門学校への進学率は84.0%、大学への進学率は57.7%と過去最高になっている。