私立大学では6割近くが「一般入試」以外で入学

大学進学者は全体の約6割だから、その中で相対的に偏差値が低いとしても、同世代の全員の中で見れば相対的な学力は高くなる。

偏差値とはあくまで、対象となる母集団の中での位置を示すだけで、母集団に含まれない同世代全員の中での位置を示すものではない。

これは中学受験でよく言われることと同じだ。

中学受験の偏差値が40だとしても、そもそも中学受験する母集団の学力平均が同世代全員の平均よりも高いため、同世代全員の中では平均以上になる、というものである。

そして、大学の偏差値とは入学するために必要な「最低」偏差値であり、入学者の平均偏差値ではない。入試方法も学力試験以外の総合選抜の比率も高まっており、Fラン大学と言われる大学にも優秀な学生は存在する。

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文部科学省の「令和5年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」では、私立大学の入学者のうち総合選抜型が17.3%、学校推薦型が41.4%、合計すると58.7%が一般学力選抜以外の入試方法で進学先を決めている。

ちなみに、国立大学でも総合選抜型が5.9%、学校推薦型が12.3%、合計すると18.2%となっている。

国立大学でも学力がそんなに高くない学生もいるし、偏差値の低い私立大学にも学力が高い学生はいて、その分布が違うだけだ。

無名の大学からでも大企業に就職できる学生は一定数いるのは、こうしたことが背景にある。

就活では「学力以外の比重」が一気に高まる

大学入試で総合選抜や学校推薦の比率が高まっているとしても、学校推薦をもらうには一定の成績を収める必要があるし、総合型選抜でも高校の調査書が必要で、調査書には履修した科目と評定が記載されている。

調査書以外にも志望理由書や活動報告書などもあるが、全体的な傾向としては大学卒業までは学力を基準に評価される傾向が強いと言えるだろう。

しかし、就活の段階から一転して、学力以外の力の比重が高まる。

少し古い調査だが、2016年の経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」では、成績表の提出を求め、参考の際に大いに考慮しているのは大卒を採用している企業のうちたった17.2%しかない。

一方で、大学への期待では、人格面で「対人コミュニケーション能力の養成」を1位に挙げた企業は39.9%、3位までに挙げた企業は79.3%であり、「自立心の養成」を1位に挙げた企業は24.4%、3位までに挙げた企業は57.0%となっている。

大学への教育面の期待としては、「論理的思考能力や問題解決能力の養成」を1位に挙げた企業は34.5%、3位までに挙げた企業は91.2%であり、「専門的な学問教育」を1位に挙げた企業は38.7%、3位までに挙げた企業は72.2%となっている。