実測値と届出値が違ったのは試験データを不正に操作したため

型式指定審査とは、簡単に言えば、自動車を製造・販売する際に国土交通大臣へ申請や届出を行って、保安基準などに適合しているかについての審査を受けることを指しています。

つまり、実測値と届出値が違ったのは、型式指定審査を申請する際に燃費試験データを不正に操作してしまったがゆえに、届出値の方が変わってしまったものであったのです。

そして、2016年6月には、三菱自動車が過去10年間に製造・販売していた自動車においても燃費試験の不正が行われていたことが分かりました。結果的に、すでに販売されていた軽自動車の台数は62万5000台に及ぶとされ、世間の耳目を集めることとなったのです。ここまでの経緯を示すと、図表3のようになります。

このような燃費不正が行われていたのは、三菱自動車にあった性能実験部と呼ばれる部門でした。調査報告書において、性能実験部は、「動力性能、排出ガス性能、燃費性能、ドライバビリティ等の自動車走行機能を最適化する、『適合』と呼ばれる業務を担当している」とされています。やや難しい説明ですが、簡単に言えば、自動車を走らせるために必要な性能がきちんと備わっているかを確認するための部署と言えるかと思います。

国交省の性能実験で定められたのとは違う方法で測定した

この性能実験部では、燃費測定について本来定められている測定方法とは異なる方法を用いていたとされています。本来定められていたのは、惰行法と呼ばれるものです。この惰行法とは、国土交通省が1999年に定めていた測定方法のことです。

もともと、自動車の燃費を測定するためには、自動車にどれくらいの抵抗がかかるのかを知っていなければなりません。それらの抵抗は、「走行抵抗」と呼ばれ、自動車が走る時に空気が当たることの「空気抵抗」やタイヤが地面をころがる時にかかる「転がり抵抗」など、様々な抵抗をまとめて走行抵抗と呼びます。

国土交通省が定めていた惰行法では、この走行抵抗をまず実際に試験路で測っておいて、その走行抵抗値を試験室内に設置されたシャシダイナモメータと呼ばれる燃費測定装置に使用するものとなっていました。

惰行法とは、その名の通り、ゆっくりと自動車を走らせる測定方法を指しています。ゆっくりと走らせると言えば誤解があるかもしれませんが、アクセルでも、ブレーキでもなく、それまでの勢いで自動車が走っている状態(惰行している状態)のことです。この惰行法では、試験自動車によって実際に試験路を走って得られた走行抵抗をもとに目標走行抵抗の値を算出するようになっています。