EVに不利な「寒冷地」で普及した理由
【安井】EVの話になるとどのメーカーがいつどんなEVを出すか、というクルマそのものの話になりがちです。EVに充電する電気をどうつくるか、充電ステーションをどのようにつくるかといったEVシステム全体の話があまり議論されないように思いますが。清水さんはどうお考えですか。
【清水】発電や送電、充電ステーションといった上流、中流の話をしないと、EVの課題がなかなか見えないし、未来社会への解決の出口がどこにあるのかがわかりません。エネルギー問題をどう解決するか、その中でEVをどう位置付けるかが重要です。
【安井】EVの開発に力を入れるのはいいのだけれど、中国のように石炭火力でたくさん電気をつくっているような国だと、Well to Wheel(油井から車輪まで)で見ると、CO2(二酸化炭素)は必ずしも減らない、ということにもなりますね。
【清水】EVを考えるときに、面白い国があります。ノルウェーです。本来は寒い国ですから、リチウム電池の効率が悪くなるのでEVには向かない国なのですが、今年に入って新車販売台数のおけるEVのシェアが4割に迫っているというのです。
【安井】どうしてですか。
【清水】三菱自動車が3、4年前に初めてアイ・ミーブをヨーロッパで発売した時も、意外にノルウェーが一番売れていると担当者が言っていました。そのあと、アウトランダーPHEVを出したら、やはりノルウェーが一番売れているといいます。それは面白いね、ということになり、3年前の5月にノルウェーに取材に行ったんです。
【安井】何か分かりましたか?
【清水】もう一目瞭然でした。ノルウェーはあまりにも寒いので、エンジンオイルが固まらないように普通のエンジン車にブロックヒーターというヒーターがついています。その電源コンセントが車庫には付いているんです。だから各家庭の駐車場、公共駐車場には必ず電源がある。230ボルトの電源がね。