なぜユニクロは古着のリサイクルを始めたのか
ユニクロは2005年頃から海外進出を進めていく中で、世界で認められるブランドになるためには、経営としてCSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ)活動を事業活動の中に置き、経営の課題の一つとして捉えていかなければならないという思いを強くした。
同時に、それまでの社会貢献室がCSR部となり、取り組む内容も社会の課題を解決するという方向に大きく広がった。
CSR活動を促進していく中で始めた象徴的な活動が、全商品リサイクル活動への取り組みだ。それまでも、フリースのリサイクルは実施していたが、その対象をユニクロの全商品に広げたのだ。そして結果的に、全商品リサイクル活動を始めたことが、その後の難民支援につながっていく。
全商品リサイクル活動を始めると、実際に店頭で回収された衣類は、意外にもコンディションのいいものが多く、十分服として着用できるものが多かった。当初は、回収した衣類を燃料などに加工して再利用していたが、再度服として誰かに着てもらうことで役に立てることがあるのではないか、ということを考え始めた。
「困っている人に服が届けられて、喜んでいただけるのであれば、それが、私たちにとっては何より嬉しいことです。自分たちのブランドの服ですから、まだ着られる状態なのに捨てられる、というのではなくて、必要な人にまた着ていただけたら、これ以上ありがたいことはありません」(シェルバ氏)
一方、世界全体で見ると、まだまだ貧困の深刻化や戦争や紛争の長期化により、衣料不足が課題となっている地域がある。
そこで、国際協力に携わる団体のリストを作り、片っ端からコンタクトをとって、「服を寄贈したいが、ニーズのあるエリアはないか? どんなニーズがあるか?」と聞いて回った。
古着の選別から輸送までをユニクロが担当
ところが、服が不足していることは事実だが、現地ニーズの確認、輸送コストやオペレーションなどの課題があり、どの団体もそこに取り組むことには二の足を踏んだ。むしろ現金を寄付してもらって、それを現地に渡して、現地で必要なものを手配してもらう方が効率的だというのだ。
コンタクトをとる予定のリストの一番下に、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の名前があった。
「当時はUNHCRの読み方もよくわかっていませんでした。国連難民高等弁務官事務所だなんて、敷居も高かったんですけれど、ここが最後の最後だと思って、勇気を振り絞って電話をかけました。すると、『服、全然足りていないんです!』と言われたんです。これでやっと前に進める、と胸が高鳴りました」(シェルバ氏)
難民支援物資の優先順位は、住居と水と食料が3本柱だ。しかし、避難生活が長引けば長引くほど、服が必要になってくる。そのことにUNHCRも気づいてはいたが、手が回っていなかった。お互いに「渡りに船」というタイミングでの出会いだった。
「ただし条件があって、服なら何でもいいわけではなく、コンディションのいいものだけを選別して、ある程度の分類がされていないと、支援現場でも無駄になってしまうこと、そしてやはり輸送のオペレーションやコストが課題であると言われました。
もちろん、そう言われるだろうことは予想していたので、選別も分類も輸送も、全部ユニクロでやります! と答えました」(シェルバ氏)
その後はユニクロとUNHCRで一緒に、大きいサイズ、小さいサイズ、半袖、長袖などのカテゴリー(現在では試行錯誤の末、18ものカテゴリーに分類されている)に分けて、暖かい国から寒い国まで、必要な人数に応じて届けられるような仕組みを作っていった。ここから、両者のパートナーシップが始まった。