年金制度が改悪されていく可能性

このように年金のモトがとれるのは10年超ですが、だからといって私は早くから「年金だけで暮らす」選択はあまり得策ではないと思っています。今後、年金制度が崩壊することはないにせよ、この制度を維持するために、どんどん“改悪”されていく可能性が極めて高いからです。

実際、2025年の年金改正では、「国民年金保険料を支払う年齢を60歳から65歳に引き上げる」とか、「受給開始年齢を70歳や75歳にする」といった案も出ています。私自身、12年前に独立起業したときに、あるラジオ番組で「受給開始年齢が80歳まで選べる時代がくる」と発言したら、かなり炎上しました。しかし、その“とき”が着々と近づいている。今後どんどん改悪されると、「80歳が開始年齢」というのももしかしたら現実となるかもしれません。

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私もそうですが、人間というのは変化を拒む“現状維持バイアス”が働くので、「年金はなくならない」「現状の制度のままもらえる」と思うのも仕方ありません。ただ現実に向き合うと、変わっていくことは確かです。私たちはそれを踏まえて、「お金の設計」を見据えていくのが賢明です。

年金は運用できる保険である

もともと公的年金は「運用できる保険」です。それゆえ、想定どおりに“もらえない”ということが実際に起こり得ます。

保険というものは、基本的に期待収益率がマイナスになるように設計されています。「ソンしない」「オトクですよ」といわれる保険でも、あくまでも手元のお金を他で運用しないことを前提にする計算であったり、何かしらのインシデント(例えば病気など)が起きたときに得られる金額も、確率的に考えれば平均的には支払い保険料のほうが多いようにできています。そうしないと保険会社は儲からないです。ただし、その代わりに私たちは保険サービスを享受できるのです。ですから年金も、運用できる保険であるという性質上、期待収益はマイナスになるものなのです。

老後は年金が思ったよりもらえないだけでなく、追加の出費がある可能性もあります。たとえば妻が専業主婦の場合、今後の年金改正で夫の定年後、「65歳まで年金保険料を支払いなさい」となったら、夫の国民年金だけでなく、妻自身の国民年金の支払いがプラスアルファで発生する可能性があります。これは要注意です。

さらに遺族年金は、廃止の方向に進む可能性も念頭に置いておくのも必要でしょう。現状の制度だと、男性と女性が非常に不平等です。遺族厚生年金は、妻が遺族になると年齢に関係なく支給されますが、夫が遺族になったら、妻の死亡時に55歳以上でなければ支給されないのです。

そうした男女差をなくすために、遺族年金というしくみ自体もなくしていこうと“改悪”される恐れが大いにある。そう考えると死亡保険の保険金も、遺族年金がもらえない前提で考えていかなくてはいけないだろうと思います。