低価格な「カジュアルスーツ」のほうが使い勝手もいい

来年あたりに完全リタイアしてしまう団塊世代が、その後にスーツを何着も買うなんていうことは考えられません。ビジネス時ですらスーツを着用する人が減っているのに、ビジネスをしなくなった人がスーツを買うはずもありません。それは、団塊世代に次ぐ人口ボリュームを持ち、15~20年後に引退を控える団塊ジュニア世代にも同じことが言えます。

実際にビジネスの場で会っても純然たるスーツを着る人は減り、ジャケスラスタイルの人か、いわゆる「カジュアルスーツ」を着用している人が増えました。従来型スーツのようなウールの薄手織物素材で作ったものではなく、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維を主体とした生地で作ったカジュアルスーツ(カジュアルセットアップとも)です。

従来型スーツをカジュアル時に着用するにはやっぱり違和感があります。休みの日でもスーツを着ている人なんて日本にはほとんどいません。一方、カジュアルスーツはカジュアル時にもちょっとお出かけ着っぽく着用できるので、購入側からすると一挙両得のようなお得感もあります。おまけに低価格です。

AOKI「プリントメッシュ素材パジャマスーツ」(画像=プレスリリースより)

代表的な商材だとワークマンのワークスーツやAOKIのアクティブワークスーツ、ジーユーのウォッシャブルテーラードジャケット&パンツになるでしょう。いずれも価格は8000~1万円台前半と従来型スーツに比べると格段に安く済みます。

このほか同系列の商品としてユニクロの感動ジャケット+感動パンツもあります。ユニクロの感動シリーズがトラッドなスーツに寄せているのに対して、これらの商材はカジュアルテイストに寄せているので、よりカジュアル時にも使い勝手が良いと個人的には感じます。

これらの商品は非常に機能性が高くストレッチ性が高かったり、シワになりにくかったり、洗濯機で気軽に丸洗いできるなどのメリットがあります。より「タイパ」を気にする現代人にとって、これらの需要は高まりそうです。

スーツ業界は消滅するのか

では、スーツ業界は今後どうなっていくのでしょうか。

筆者は、現在の大手スーツ4社がそのまま存続し続けられるとは思えません。飲食店やネットカフェなどの他業種形態を増やしてリスク分散をしている青山商事、AOKIはある程度の規模を維持できるでしょうが、主要業態がスーツしかないコナカ、はるやま商事はさらに縮小し、場合によっては消滅することやどこかに吸収合併される可能性もあります。

九州を拠点とした「フタタ」というスーツチェーン店は2003年にコナカと資本提携し、2006年に完全子会社化、2020年にコナカに吸収されてしまいました。このような吸収合併がまた起きないという保証はありません。それだけにスーツを主要業態とする各社は今後さらに難しい舵取りを迫られそうです。

従来型スーツ自体が完全になくなることはないでしょうが、小規模企業や小規模ブランドに適した商材になって落ち着くのかもしれません。極言すると、今の着物の「訪問着」のような位置付けの衣料品になるのではないでしょうか。

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