「卒業してから地獄が待っている」

小学校から中学・高校・大学に至るまで、ステージは違えど、入学すると必ず、偉い先生、校長先生、学長、学部長などのスピーチを聞く機会があります。

その多くは、入学生を歓迎・叱咤激励し、晴れやかな未来を語るものでしょう。

しかしながら、ある年に、これとはまったく逆の、極めて「ネガティブ」な入学式のスピーチが油画専攻の新入生に向けてありました。

教授陣がひと言ずつスピーチをしたあと、その中の某大御所の画家がこう述べました。

「入学おめでとう、卒業してから地獄が待っているので、この4年間は大いに自由に、好きなことをやりなさい。ここにいる先生たちも、偉そうにしているかもしれないが、今でも地獄でもがいているかもしれないのだからね」

写真=iStock.com/Thinnapat
「卒業してから地獄が待っている」(※写真はイメージです)

「君は、僕より売れていないよね」

この毒のある歓迎スピーチ、実は現役のアーティストから、アーティストの世界に足を踏み入れた雛鳥たちに贈る、現実を知り抜いた人だけが口にできる珠玉のメッセージであったかもしれません。

ちなみに、この大御所画家と、同じ学科内の他の教授とが、とある授業で口論になったそうです。その際に放った大御所画家のひと言。

「君は、僕より(絵が)売れていないよね」

このひと言で、教室中が水を打ったように静まり返り、口論が収束したそうです。

どの世界でもプロフェッショナルはシビアな場に立ち続けているのです。