大学までの一貫校ではなく進学校

稲花小学校を卒業した生徒は、「一定の学力基準に達している」という条件はあるものの、大半は隣接する東京農業大学第一高校(通称「農大一高」)中等部に内部進学する。なお、同校は来年度から高校募集を停止。完全中高一貫校になる。

「農大一高から東京農大に推薦入学制度を使って内部進学する生徒は少なく、毎年十数人しかいない。子どもを稲花小に入れようとする保護者からすると、小中高一貫の進学校としての位置づけ」と前出の幼児教室経営者は話す。

今年、農大一高(卒業生317人)は国公立大81人、早慶上理191人、明治大109人の合格者を出しており、その合格実績は年々高まっている。

稲花小学校が躍進している背景には上位校のこうした実績に加え、世田谷という立地の良さや、東京農業大学の農場を使った体験型学習など、理系に強いことなどがある。さらに幼児教室経営者は「現代の中流家庭にマッチしている」点を挙げる。学校に直結しているアフタースクール(学童)が共働きの家庭にも歓迎されているようだ。

通常月は週1利用で月8000円、週5で3万4000円、特別月(4、7、3月)は週1で1万400円、週5で4万4200円の費用がかかるが、ほぼ全生徒が登録。利用時間は下校時から午後6時半までとなっているが、7時まで延長預かり(有料)ができ、稲花小学校の重要なアイテムになっている。「校内のさまざまな施設を使い、イベントも盛りだくさん。楽しみにしている児童も多く、今のところ大成功だと思う」と東京農業大学関係者は自画自賛する。

「学校側も保護者たちもどこか必死な感じがする」と話すのは冒頭で登場した幼稚舎OGだ。前出「日経ビジネス電子版」で初めて稲花小学校を知ったというが、住まいは比較的近い場所にあり、いろいろ気になりだして調べてみたという。「内実はわかりませんが、目の前のことにあくせくしている雰囲気。余裕がなさすぎ」と手厳しい。