女性社員の思いつきをヒット商品にするコツ
岡山氏は部下の朝の第一声や顔色を見て、「ちょっと今日は、声のかけ方や指示の仕方を変えてみようかな」と思うときもあるという。きめ細かくメンバーの1人ひとりを見ているのだ。かといって無理に女子社員に交ざろうと、一緒にランチを食べたりはしない。
「特に意識してませんが、私は男連中と食べることが多い。彼女らは彼女たちだけで、おしゃべりしたいこともあるでしょう。そのほうが逆に『岡山さん、さっき昼休みにこんな話したんですけど……』と、そこで思いついたアイデアを話してくれることも出てくる」(岡山氏)
そしてそれと同時に心がけているのが、具体的なゴールを言葉で描いて、チームのモチベーションを上げることだ。さきほどの「あんたはヒーローやで」という殺し文句もそうだが、岡山氏は思い切り大きな夢を描くことにためらいがない。ナノケアのときは、こんな壮大な目標を描いてみせた。
いまパナソニックでは、エステ商品はもちろん、ポケットドルツのような電動歯ブラシも「オーラルビューティー」のカテゴリーに含めて、「パナソニック・ビューティー(Panasonic Beauty)」という言葉で1つのブランドにしようとしている。岡山氏は、こう説明する。
「日本に20代から60歳近くまでの女性が、3千数百万人いるとします。そのうちスチーマーを使ってる人は数万人、『ながら美容』ができるなら買いたいという購入意向者は数百万人いるとすれば、日本人女性の何割かがナノケアを持つことも不可能ではない。
そうなったら、パナソニック・ビューティーのブランドが広がって、それはジャパニーズビューティーになり、やがてアジアン、グローバルビューティーとなっていく。そして何年後かに、グローバルビューティー=パナソニック・ビューティーだ、となったときは、あなたが創業者だよ」
女性社員の思いつきやセンス、感性は素晴らしい。だが、それを最大限に引き出すためには「センスは活かすけれど、決して媚びない」ことを心がけている、とも言う。