孫の固定観念を粉砕した「伝説の経営者」の教え
アメリカにくる前から、孫はいつかかならず事業をやりたいという強い意志をもっていた。
勉強もビジネスに役立てなければあまり意味がない。
日本マクドナルド社長・藤田田著の『ユダヤの商法』を読んで感銘を受けた高校生の孫は、単身九州から上京して藤田に直接面会を申し込んだことがあった。
藤田は、この無謀な少年を社長室に招き入れ、助言を与えた。
「私が若ければ、食べ物の商売をしないで、コンピュータに関連したビジネスをやると思う」
アメリカにきて、マイクロコンピュータとの衝撃的な出会いをしてからも、孫は藤田のこの本を何度も読み返した。
「金儲けは、いいことだ。金にキレイ、キタナイはない」と藤田は言い切っている。
孫はこの本によって、日本人的な儒教倫理にしばられて、「金儲けはキタナイこと」と思い込んでいた固定観念を粉砕されたのである。
名門・UCバークレー経済学部に編入
孫正義はホーリー・ネームズ・カレッジを2年足らずで終え、高校1年の夏に短期留学で見たあこがれのカリフォルニア大学バークレー校一本に志望校をしぼった。受験といっても、3年編入という形になる。正義は志望する経済学部の秘書に電話をしてみた。
すると、教授会の会議で、正義を一番で入学させることに決まったとの回答を得た。あとは大学の事務局の手続きに問題がなければ、そのまま合格になる。
ホーリー・ネームズ・カレッジからバークレー校に編入できるのは、全体の10パーセントにすぎない。なんとしても、名門バークレーで学びたい。
1977年、正義はみごとカリフォルニア大学バークレー校の経済学部に編入できた。同じ年、仲よく優美もバークレー校に編入し天体物理学を学びはじめた。
ビル・ゲイツはそのときすでにハーバード大学を中退、アルバカーキーでマイクロソフト社を興していた。