男女交際の変化を判断する分岐点

回答分布の推移を見てみましょう(図表1)。出生動向基本調査は、1940年開始ですが、独身者調査は1982年が初回で、おおむね5年おきに行われています。

この「友人として交際している人がいる」をどう解釈するかによって、ここ40年間の若者の男女交際の変化の判断が分かれます。

「交際している異性がいない」と回答した人は、1982年では、男性36.8%、女性30.1%です。つまり、約3分の2の未婚者に「交際している異性」が存在していたことになります。その後、「交際している異性がいない人」はほぼ一貫して増え続け、それが2021年には、男性は72.2%、女性は64.2%までになります。この数字のみでは、男女交際はこの40年の間、不活発化の一途をたどっていると判断されます。

一方、「恋人として交際している異性」を基準にすると、見方は変わってきます。

1982年には、恋人として交際している独身者は、男性17.1%、女性18.2%と、男女とも2割に達しません。そして、バブル景気(1986~1992年)が始まっていた1987年には、男性19.4%ですが、女性は26.2%にまでジャンプします。

男性も1992年には、23.1%となります。おおむね1990年代から2010年ごろまで、恋人がいる独身者の割合は、男性22~23%、女性30~33%とたいへん安定しています。

そして、男女とも2010年以降、減少傾向に転じます。

2021年には、男性19.8%、女性26.0%となり、今に至ります。バブル期から恋愛が盛んになり、リーマンショック後に衰退した、という実感ともこの見方は一致しています。

この両者の見方を合わせると、どうも、この40年の間に「結婚前の男女交際の仕方」が、質的に変わってきたのではないか。そのように考えられます。

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異性の友人と同性の友人が違うものだった時代

それは、「異性の友人」というカテゴリーの意味の変化です。

この調査が開始された1982年には、「友人として交際している異性」が、一つのカテゴリーとして自立していたのではないかと推察されます。

告白していないから恋人ではないけれど、「単なる友達ではない特別な関係」と認識されていたのではないでしょうか。

つまり、当時は、異性の友人と同性の友人は、それぞれ“違うもの”として考えられていた。

もちろん戦前のように中学以降、男女別学という時代ではありません。しかし、同性の友人と同じように異性の友人と一対一で付き合う、つまりはいろいろな話をしたり、遊んだりする習慣は、まだできあがっていなかったと思われます。

私の大学入学年は1976年ですが、男女共学とはいえ、まだ女子学生は少ない時代。遊びといえば、男性同士で飲みに行ったり、麻雀したりというように、プライベートでも男女の領域の区分が大きかった時代です。もちろん、クラスコンパや合コン、サークルなどで女子学生と話したりする機会はありましたが、そこで男性の友人と同じように友情関係を育む、もしくは気軽に二人で一緒に行動するという機会は少なかったように思えます。

そんな中、二人で一緒に並んで授業を受けたり、わざわざ食事をしたり、さらには遊びに行ったりする仲になれば、そこには「特別な関係」であるとお互いに認識せざるを得ない状況になります。