なぜ若者のデート経験率はそれほど減っていないのに、結婚に結び付かないのか。社会学者の山田昌弘さんは「デートする相手は特別な関係という“足かせ”がなくなり、デート自体を楽しむ若者が増えたから」という――。
公園にいるカップル
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中国の高校生は“男女交際禁止”

私が受け持つ大学院ゼミには、何人もの中国人留学生が出席しています。

彼らに、中国の恋愛事情を訊いてみました。

とにかく、高校までは、勉強第一なので、男女交際禁止。

もし、二人でデートしているところが見つかったら、親が学校に呼び出され、こっぴどく叱られるそう。とにかく、中国ではどの大学に入学できるかが、日本以上に人生にとって重大事。恋愛にうつつを抜かして試験勉強をおろそかにしてはならない。大学に入ったら、恋愛は自由。だけど、卒業する頃には、親から結婚を考えろと言われ、25歳になっても結婚相手が見つからない女性は、親から見合いの話が次から次へと持ち込まれる――。

あくまでもゼミ生の話です。中国は広いし、日本に留学するくらいの学力があり比較的裕福な学生の話だ、というのを割り引いても、中国では恋愛が活発でないことは感じられます(ちなみに、中国では学校でのいじめもないそうで、他人をいじめている暇があったらその時間勉強するとのこと――余談です)。

男女交際が「不純異性交遊」だった時代

これを聞くと、多分、高齢の方々は、昔の日本と似ていると思われるかもしれません。

戦後から高度経済成長期にかけて、中高生の男女交際は「不純異性交遊」と言われ、補導の対象となりました。実際、1960年代では、学生服を着ている男女が二人で道を歩いているだけで、巡回している警察官に見つかると厳重に注意、指導されたといいます。それは、1990年くらいまでは地方でも残り続け、かつて地方出身の私のゼミ生から「そういう話は聞いたことがある」と言われました。

交際の内容が“純粋かどうか”というより、未成年の異性が二人だけでいること自体が不純であり、「少年非行」として、認定されていたわけです。今でも奈良県の条例(2006年施行)では、警察職員が非行少年として補導できる項目に、喫煙や暴走行為と並んで「不純異性交遊」とみなされる項目が入り、マッチングアプリ等を利用して「異性」と会うことを禁じていますが、現実に補導が行われているかどうかは、わかりません。