いまだ残る男女交際禁止の校則

令和になった今でも、男女交際禁止の校則をもつ高校は多くあります。ほとんどの場合は、昔の校則が残っているだけで、実際は運用されていないと思われます。

しかし2022年、興味深い判決があり、報道されました。

東京の私立堀越高等学校には、「特定の男女間の交際は、生徒の本分と照らし合わせ、禁止する」いう校則があり、それを根拠に男子生徒と交際した女子生徒に自主退学を強要したのです(男子生徒がどう処分されたかは報道なし)。2019(令和元)年というから驚きです。

これを違法として生徒側が損害賠償請求をしたのですが、東京地裁は「自主退学を強要したのは違法」として損害賠償は認めたものの、校則自体は「違法ではない」という判決を下しました(2022年11月30日東京地裁判決)。

男女交際を理由に退学を強要する高校がいまだ存在するということで、これは当時有名になった訴訟事件です。何をもって男女交際とするかは、少なくとも校則に書かれていないようです。ちなみに、日本性教育協会の調査による高校生のデート体験率は、2017年時点で、男子高校生54.2%、女子高校生59.1%、男子中学生27.0%、女子中学生29.1%ですから、デートしたら退学になるのなら、日本の半数以上の高校生、4人に1人以上の中学生は退学になってしまいますね。

高校生カップル
写真=iStock.com/joka2000
※写真はイメージです

結婚に結び付かない恋愛は“遊びの一種”か

ただ、少なくとも、バブル経済期以前の時代なら、「結婚前」の男女交際について、社会的な規制がかかっていたし、現実に深い交際は控えられていたのも事実です。

その背景にあるのは、「結婚に結び付かない恋愛、男女関係は単なる遊びである」という考え方です。言い換えれば、「男女交際は、結婚に結び付いて、初めて正当化される」という意識です。

この考え方自体は、恋愛感情(もちろん、性的関係も)を結婚に閉じ込めようとする近代的恋愛の成立と普及、そして、その崩壊とかかわってくるのですが、それはのちの機会に詳しく考察する予定です。

そして未婚者にとっても、「結婚に結び付かない恋愛は良くないものである」という考え方は、バブル経済期前までは広く共有されたものでした。

それをもっとも象徴するのは、未成年、特に中高生の恋愛に対する考え方です。なぜなら、中学生や高校生の男女交際は、そのまま結婚に結び付くことは稀だからです。結婚に結び付かない恋愛は“遊びの一種”だから一律禁止すべきだというロジックが存在し、今でもその名残があるのです。恋愛に伴うキスやセックスなどもってのほかだったわけです。