「ご近所さん」の日常使いが少ないことが課題に

仕入れる際は、包装しないで出荷してもらうことへの理解が欠かせません。

一般的なスーパーでは、たとえばほうれん草は包装フィルムに包まれ、きのこ類はプラスチックのトレイに置かれた上で、トレイごと包装フィルムでくるまれています。

全国の46団体がスーパーマーケット136店の店頭で実施した「全国スーパーマーケット環境調査」(取りまとめ=NPO法人環境市民の堀孝弘さん)によると、包装なしで売られている野菜の「はだか売り率」は約2割(棚面積比20.1%、商品点数比17.0%)でした。フランスでは63%がはだか売りだとするデータがあり、それと比べると日本では多くの野菜が包装されていることがわかります。

斗々屋の取引先は、有機農家やオーガニック食品を扱う企業ばかりということもあってか、「包装を減らしたいと思っていた」と理解してくれる生産者が少なくありませんでした。しかし、ほうれん草などは乾燥に弱く、当初は店頭に並べているうちにしおれてしまうこともあったそうです。そこを、陳列方法を工夫するなどして解決していきました。

納豆についても、業者と試行錯誤を重ね、一般的なプラスチックや発泡スチロールなどの小分け容器ではなく、ステンレス容器に入れて作ってもらうことに。ステンレス容器のデポジット代を払ってそのまま購入することも、量り取って少量だけ買うことも可能です。

こうした取り組みがメディアでも紹介され、「ゴミを出さない」「食品ロスを出さない」という方針に共鳴するファンができました。京都旅行にあわせて「来てみたかった」と遠方から来店してくれる人が出てきた一方、日常的に利用してくれる近所の人の来店が少ないのが課題でした。

撮影=山本奈朱香
イワシやサワラ、牡蠣などの魚介類も量り売り

ゴミの出ない暮らしは「めっちゃ楽ちん」

そこで2024年1月、同社はインスタグラムにこんな投稿をしました。

#丁寧な暮らし系の人が行く店、めんどくさそう、なんかハードル高い、値段高そう、、と思っていらっしゃる方の割合の方が当然多いということはしっかりと感じています

2024年は斗々屋は、『#丁寧な暮らし』とか『意識高い系』とかのイメージからはかけ離れたところにいることをもっとババン! っと前に出していきたいと思います

実はゴミの出ない暮らしはめっちゃ楽ちんなんです。(中略)

実はズボラな人に向いているということを体験してもらいたい。

梅田さんは言います。「私も本当にズボラなので、ゴミを出すのも面倒なんです。たとえば、納豆を買ったら上にフィルムがついてるから、洗って絞って捨てないといけないですよね。くさいし、誰がゴミを捨てるかで家族でけんかになったりもする。ゼロウェイストなら手を汚さず、ゴミ出しにも行かなくていい。『丁寧な暮らし』と言われるけど、すごくズボラ向きなんですよ」