成功が見えることも大切で、例えば、長らく成長が止まったままの事業で「3年以内に売り上げ2倍」という目標を掲げてもメンバーは本気にしない。さらに、仕事量が増えて消耗していくだけのビジョンより、その仕事を通じて自分自身も学び、成長できるものが共感しやすい。

ビジョニングの第一歩はリーダーが責任をもってアイデアを出すことである。まずは自分自身で現状を分析し、綿密に考える。それから、必ずメンバーも含めて一緒に協議し、まとめあげていく。

最後に、出来上がったビジョンが図12に示した4つのポイントを満たしているかをチェックする。これは、ボイスの4つの側面と同じである。つまり、ビジョンがボイスに適ったものになっているかを最終チェックするのだ。このとき、大切なのは、自分だけでなく、メンバーもこの4つのポイントにOKを出すだろうかという視点でもチェックすることである。

メンバーに伝えるときは、数値目標に合わせて、最終的にどのような状態になるのかを視覚化、映像化するように話して聞かせるのが表現のポイントになる。ビジョン創造型のリーダーには、想像力と創造力の両方が必要である。すでに目の前にある現実の仕事を処理するだけでは従来型のマネジャーと変わらない。

メンバーとの協議で気をつけたいのが、リーダー1人が力を入れ、「よし、これでいくぞ!」と決めても、メンバーが誰もついてこないこと。背中で引っ張るリーダーは、いまは通用しない。逆に「君はどう思う?」「君は?」とメンバーの意見ばかり求めて決断できない世論調査型も信頼されない。

リーダーがアイデアを出し、メンバーと協議し、最終的にはリーダーが決断を下す。これを繰り返すことが大切である。

メンバーは、自分たちでつくりあげたものだと思うからこそ、そのビジョンが共有され、共感が得られるようになる。

(構成=伊田欣司)
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