「割高な銘柄」が過大評価され、「割安な銘柄」が過小評価されている

世界中で巨額なお金が皆この同じインデックス投資をすることによって、この状況が加速しているんだと思う。2023年に出た海外の行動経済学の本の邦訳版ではこんな風に表現されていた。同じことを言っていると思う。

『時価総額加重平均の考え方をインデックスファンドに適用するのは欠陥がある。どの企業への投資額も株価と連動するため、割高な銘柄が過大評価され、割安な銘柄が過小評価されるからだ』
『個人投資家にとって賢明なアプローチであると考えられているインデックス投資は、その根底に行動上のガンを抱えている。S&P500のような時価総額加重平均型インデックスを買うと、(ITバブルピークの)2000年にはそのうち50%近くをハイテク株で、(リーマン・ショック直前の)2008年には40%近くを金融株で保有することになる』
富の法則 一生「投資」で迷わない行動科学の超メソッド』ダニエル・クロスビー(徳間書店)※カッコ内は筆者 参考文献

投資の成功のカギは、できるだけ株式を「安く買って高く売る」だよね。もちろんとっても難しいことだから、僕はそんなチャレンジを自分でしようとは思わないけど真理だろう。でも、時価総額加重方式のインデックスの中で起こっていることは、逆の「高く買って安く売る」だと、この本は言っている。

時価総額の大きな銘柄がさらに人気になって株価が上がると、インデックスに占める比率はさらに高くなる。機関投資家や我々個人投資家のインデックス投資へのマネーの流入は、それらの株をさらに上昇させることになる。もしかしたら既に割高な株価になっているのかもしれないけど、インデックスの中での力、比率は自動的に大きくなっていく。

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投資の成功のカギは「安く買って高く売る」なのに…

逆に、株価が下がって割安になった株は、本当は買って増やしておきたいところだが、インデックスの中では時価総額の低下に伴って比率は自動的に下がり力を失っていく。――確かに「安く買って高く売る」とは逆のことが起こっていると言えるかもしれない。

長々と小難しいことを言ってきたが、つまり僕は、世界的な機関投資家のインデックス志向や、特に日本で顕著なインデックス投資ブームに対して、そこはかとない居心地の悪さを感じているんだと思う。

皆で一緒になって、一部の銘柄に傾斜した「歴史的に割高な」株式投資を行っている側面があるのではないか? という心配。もし僕の感覚が多少なりとも正しいとしたら、指数を信じて長期の積立投資を行った君たちの「献身や忍耐」は十分に報われない、つまり過去に比べて低いリターンしか得られない可能性がある。

君たちの皮算用計画では少なくとも年5%、できれば8%あったら最高、と考えていたはずなので、もしそのレベルのリターンが達成できないとすると、「人生のハンドルを握る」という目的が達成されないことになる。

つまり「最後のリスク」が顕在化してしまう。そうしたモヤっとした心配を僕は現在のインデックス投資に抱いていて、だから「ベースとして」という言い方をしているんだと思う。