モテなかったが、「俺は麻雀ができる」という自信があった

この手のサークルに身を置いた人たちによると、たしかに活動と称して見事ガールフレンドをゲット。さらに踏み込んで複数の異性と体の関係を持った者もいるにはいる。

しかし、そうした者は、この手のサークルでも、今日の言葉で言えば「勝ち組」というか、モテる者何人か。サークルではごく一部にすぎないという。

「結局、そうした不埒な目的のサークルであればあるほどモテるやつとモテないやつの差はすごく開く。カッコいいやつはよりカッコ良さが引き立つ。逆も真なり。カッコ悪いやつはカッコ悪さが引き立つんです。今の言葉でいう“格差社会”です」

ヒラタさんが語る“格差社会”は、その後の彼の人生にずっと付きまとう。

「私は91年の大学入学なのですが、バブル期ならではの勢いとか、それを横目には見ていましたが、異性とは縁がなく、サークルでもモテるやつらとは同じ空気を吸っていても別世界。もっぱらモテない男同士で麻雀に興じていました」

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麻雀の腕には自信があるというヒラタさんだが、こちらにのめり込むと、ますます異性との縁は遠のいた。それでも当時のヒラタさんは妙に自分に自信があったと話す。

「俺は麻雀ができる。どこか適当にいい会社に就職したら麻雀で上司や同僚、取引先からかわいがられて、就職したら、その時こそ楽しい人生を送れるだろう……と本気で思っていました」

「大人になれば結婚するのが当たり前」という時代

こうヒラタさんが思うのも無理はない。当時、就職戦線は空前の売り手市場。企業側は内定学生を引き留めるため「拘束旅行」だの「食事会」だのといったイベントがあった時代だ。

それにまだ世相は、「高校卒、大学卒を問わず、大人になれば皆、結婚するのが当たり前」と思われていた時代でもある。

20歳前の学生だった当時のヒラタさんも、進級して大学4年になれば就職活動という名の人生の一大イベントに明るく、軽く、楽しく参加して、そこそこ世間で名の通った企業へと就職。遅くとも30歳くらいまでには大学や就職先の関連で女性と知り合い、結婚して……という人生を思い描いていた。

ところがバブル崩壊。サークルの先輩……、といってもごく一部の先輩だが、その表情が一変した。それでも一夜にして世の中が変わった訳ではなかったのでヒラタさん自身は、特に生活が変わることもなく、ことを楽観的にみていたという。

「必要な人材というか……、私立大学の文系卒ならサラリーマン。そのほとんどが営業職に就きますよね。だから明るく話ができて場を盛り上げられる。それさえできれば就職は困らないと本気で思っていました」