優秀な人材を集めるためには?

クリティカル・ビジネスの実践において「手元にあるもので始める」ことが求められる二つ目の理由が「ステークホルダーの誘因」です。

前節において、私は「難易度の高いアジェンダを掲げる」ことが優秀な人材を集める上で重要だという指摘をしました。そう、確かに優秀な人材は難しくて挑戦的なアジェンダが大好きです。しかしでは、どのようにすれば、彼ら優秀な人材に、クリティカル・ビジネスのアクティヴィストが掲げる「難易度の高いアジェンダ」を伝え、知らせることができるでしょうか?

第1回記事〈iPhoneの修理代が本体代より高いのはおかしい…欧州で「修理できるスマホ」が熱狂的な支持を集める理由〉でも指摘しているように、クリティカル・ビジネスが掲げるのは必ずしも多数派のコンセンサスの取れていないアジェンダです。

これはつまり、何を言っているかというと、このアジェンダに共感してくれる人は確率的に少数であり、したがって優秀な人材を集めるためには、できるだけ多くの人に、このアジェンダの存在を知ってもらう必要がある、ということです。

ここでカギになってくるのが「報酬を伴わないメディアによる告知」、いわゆるPRです。PRは広報と訳され、ともすると一方的に情報を開示して終わるようなスタティックな活動としてイメージされがちです。

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効果的にPRするためには何が必要か

しかし本来は、その語源であるパブリック・リレーションズという言葉が示す通り「ある組織とその組織を取り巻く人間とのあいだに望ましい関係を築くための一連のコミュニケーション活動」と定義される、非常にダイナミックな活動です。

特に、少数派のアジェンダを掲げて社会の価値観の変革を目指すクリティカル・ビジネスのアクティヴィストにとって、PRは絶対に外すことのできない活動と言っていいでしょう。

さてでは、何がPRを展開する上での鍵になるのでしょうか。PRが何よりも求めるのは「鮮度の高い情報」です。そしてこの「鮮度の高い情報」は、とにかく動き出さないと生み出すことができないのです。

そして最後、三つ目の理由が「学習の加速」です。クリティカル・ビジネスは、その定義の上からして原理的に、既存の枠組みや方法論とは大きく乖離した領域でビジネスを展開します。これはつまりクリティカル・ビジネスにおいては「学習のスピード」が極めて重要な競争要因になるということを意味します。クリティカル・ビジネスの主体はすべからく「学習優位の組織」でなければなりません。

では、どのような要素が学習を加速するのでしょうか? フィードバックです。クリティカル・ビジネスのアクティヴィストは「手元にあるものからまず始める」ことで、市場や社会からのフィードバックを早期に取得することができます。