過剰な沸騰は「メディア離れ」に拍車をかけるだけ

立花氏自身が、この事件について、「民主主義社会ではジャーナリズムが時の最高権力者を倒すこともあるのだということをこの事件は教えてくれ、それによって、我々日本のジャーナリストも大いに刺激されたものだった」と語っている(立花隆『アメリカジャーナリズム報告』文春文庫、1984年、54ページ)。

「倒すこともある」、との表現に注目しよう。特に「もある」の部分に着目しよう。立花氏が、ジャーナリズムによる権力打倒が、きわめて珍しいと自覚していた証拠だからである。いつも倒す、どこか、反対に、「倒すこともある」くらいの稀少な出来事だと認識していたからである。

にもかかわらず、なぜ、「政治とカネ」について、日本のマスコミは沸騰し続けられるのだろうか。

おそらく、マスコミで働く人たち自身が、自分たちの影響力の低下を、ひしひしと痛感しているからに違いない。いくら「第二のリクルート事件」と笛を吹いてみたところで、岸田首相は辞任していないし、その気配もない。それどころか、解散総選挙が噂されたり、次の自民党総裁続投の意欲が報じられたりしている。

だからこそ、存在感のなさを隠すかのように、過剰とも思えるほどに「政治とカネ」を声高に叫び続けるのではないか。新聞は読まれず、テレビは見られていない、そのむなしさをかき消そうとするかのように、強く政治家を責めるのではないか。

そうしたマスコミの姿勢こそ、さらなるメディア離れを招きかねないのだが、70年にわたって「政治とカネ」を問題視して止まなかったのだから、病は死んでも治らない。

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