防疫・害虫駆除の最前線で闘う「名もなき戦士たち」

日本の食と農を脅かす「特殊害虫」はサツマイモの害虫だけではない。

数十年前まで、九州以北では南西諸島で採れる野菜の多くや果物を食べることはできなかった。どうしていまは、こうした南の島で採れたゴーヤやマンゴーを九州以北でも食べることができるのだろうか?

そこには、今回問題になったサツマイモのゾウムシだけでなく、害虫根絶に仕事人生をかけた数多の方々のご苦労がある。

当時、南西諸島には果菜類をむさぼり食う特殊害虫のミバエ類がいて、ウリ科やナス科の野菜や、亜熱帯果樹の多くは、法律による移動の制限がかけられていた。

もし特殊害虫との戦いがなければ、今の日本はどうなっていただろうか?

日本のいたるところで、

・ミカンの皮をむくと、ときどきウジ虫が出てくる
・害虫のついた外国産の果樹や野菜が日本の市場にあふれている
・甘いサツマイモだが、ときどき苦くて食べられないハズレがあり、虫が出てくる
・沖縄産のマンゴーを使ったパフェなんて食べたいけど夢のまた夢
・ゴーヤと呼ばれるニガウリが日本のマーケットには存在しない

といった現実が日常になっていた可能性がある。

筆者提供
グァバの実から這い出るミカンコミバエの幼虫

こうした事態にならないよう日本の食を守り続けてきた無数の「名もなき戦士」たちがいて、そして、いまもなお最前線で闘っているのである。

高まる侵入害虫の全国蔓延リスク

海外から日本にやってくる侵略的外来種の多くが、いま私たちの暮らしをおびやかしつつある。農作物や健康を脅かす侵入害虫が日本に蔓延するリスクは年々高まっている。

九州では柑橘かんきつの害虫である外来種のミバエ類が、そして全国的には冒頭に書いたようにサツマイモを加害するゾウムシ類が、繰り返し日本に侵入している。

そしてその都度、国の植物防疫官と現場職員の懸命な努力によって根絶されているのが現状だ。