異常な事態
2020年には新たな脅威が目前に迫った。
あろうことか、九州に幼虫がミカンの果実をむさぼり食う、別の特殊害虫であるミカンコミバエが侵入したのだ。この年、鹿児島で84匹、熊本で5匹、宮崎で1匹のミカンコミバエのオスが、仕掛けたフェロモンの罠に捕らえられ、発見されたのだ。
そして、2021年5月に長崎・熊本・鹿児島でそれぞれ5匹、18匹、4匹のオスが発見されたのを皮切りに、1年間で福岡7匹、佐賀4匹、長崎128匹、熊本41匹、鹿児島23匹、沖縄318匹と、実に合計521匹ものオス成虫が見つかった。
はっきり言って、これは「異常な事態」だ。
「外来ミバエ類の北侵を防げ」
この年、長崎県と鹿児島県のウェブサイトでは、果実から幼虫が発見されたと公表している。
報道によると、両県ではヘリコプターでミバエを誘引して消すためのテックス版(ミカンコミバエのオスを誘引するフェロモンと殺虫剤を混ぜた液体を染み込ませた約4センチ四方の板)を撒いてもいる。
捕獲されたオス成虫数の多さは、九州でミカンコミバエが繁殖していた可能性を示す。これらは現場の方々の懸命の尽力のおかげで、それぞれ1年以内に根絶された。
(注)「日本でミカンが食べられなくなる日」コロナ禍に進む“知られざる重大危機” 参照
だが、今年も南西諸島に仕掛けられた罠にミカンコミバエがかかっており(*5)、現場で防除作業を続けることで、外来ミバエ類の北侵を防いでいるのが実情だ。