デジタル機器が問題を大きくする

もう一つ、昔と大きく違うのはデジタル機器が家庭に入り込んでいることです。

一人一台スマホやタブレットを持つのも当たり前になっており、家族それぞれが自分の好きな動画を見たりゲームをしたり、SNSをやっているのが珍しくありません。昔ならもっと家族で同じテレビ番組を見たり、会話したりしていたであろう時間も減ってしまいました。これも、愛情が伝わりにくくなっている要因の一つです。

そのうえ、「子どもには好きなようにさせるのが良い」「自主性に任せる」という考えのもと、制限をせずにゲームやスマホをやらせてしまっている例が多くなっています。

現代の不登校とデジタル機器とは、切っても切り離せないというくらい大きな関係があります。

不登校の子が家で何をしているかといえば、多くの場合がスマホ、ゲーム、YouTubeです。家にいてもやることがなければ、学校のこと、将来のことなどを考えるでしょうが、ゲームにハマっていれば考えなくてすんでしまいます。

これが不登校を長引かせる要因です。

友だちとのケンカがきっかけで学校を休んだとしても、数日、家であれこれと考え、「明日はこうやって話しかけてみよう」とか「別の友だちがいるから行ってみよう」と思えれば再登校できるでしょう。でも、家でゲームをやって過ごしているうちにどんどん学校に戻りにくくなり、再登校が難しくなるのです。

「学校に行かなくてもいい」は本当か

多様性が重視され、さまざまな選択肢も増えている現代では、「学校に行かなくたっていい」という言説もよく耳にします。行きたくないなら、無理に行く必要はない。自分に合った居場所を見つけられればいいし、学校以外で好きなこと・やりたいことを見つけ、生活できればいい……。実際、そのようにして、自立した生活を送ることができている人はいるでしょう。

私も、学校以外の選択肢があること自体は素晴らしいと思っています。「学校だけがすべてじゃない」というのは、本当にそのとおりです。

ただ、むやみに「学校に行かなくてもいい」と言うのは危険です。

学校に行かずに、学校と同等の教育や機会を得ることはかなり難しいのが現実だからです。

図表4にある例を見ていただくとわかるように、学校と同等の学習や運動、同世代のコミュニティへの参加等の環境を民間企業でまかなおうとすると、月に25万~30万円くらいかかります。これだけの費用を出し続けられる人は少ないでしょう。

図版=『不登校の9割は親が解決できる』(PHP研究所)より

逆に言うと、不登校であればこれだけの機会を失っていることになります。

「学校に行かなくてもいい」と言う人も、「学力がゼロでもいい」と言っているわけではないですよね。小学校低学年から勉強をしなかったら、漢字も読めないし計算もできないことになってしまいます。それでは自立した社会生活を営いとなめません。

小川涼太郎(著)、小野昌彦(監修)『不登校の9割は親が解決できる』(PHP研究所)

学校に行かない場合は、本来得られるはずの教育の機会を別の何かでおぎなう必要があるのです。

運動もそうです。成長段階にある子どもにとって、運動はとても大切です。家にひきこもって運動をしないまま過ごしていると、身体が発達せず、弱くなってしまいます。不登校の子どもの中には、筋肉が弱って歩けなくなった子もいます。

生活習慣やコミュニケーションについても、学校に行かずに、年相応の能力を身に付け、キープするのはかなり難しいでしょう。

こう考えると、「学校に行かなくてもいい」と安易に言うことはできないと感じます。

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