原因がわからず戸惑う親たち
実際、不登校の子ども自身、理由がはっきりとはわからないことがよくあります。親は「どうして行きたくないの?」と理由を聞きますが、「嫌いな授業があるから」「お腹が痛いから」「意地悪な子がいるから」など、聞くたびに答えが違うというのもよくある話。本人もよくわからないけれど、やる気が出ない、学校に行きたくないということなのです。
原因がよくわからないので対処ができず、何もしないまま不登校期間が長くなっていきます。多くの親はあちこちへ相談に行き、本を読み、なんとかしようと頑張ります。でも、具体的に何をしたらいいのかがわからないのです。
子どもが無気力になったり、不安になったりする背景には、「お父さんお母さんからの愛情をうまく受け取れていないことによる自己肯定感の低下」があります。
不登校の要因として「友人関係のトラブル」「先生との相性」「勉強」など具体的なものを挙げている場合も、それは原因というより「きっかけ」であって、根本的には、やはり自己肯定感の低下があるのです。
立場が逆転した親子関係
親世代が子どもだった頃と比べて、いまの子育て環境は大きく変わってきています。
昭和の時代は体罰も多く、子どもには問答無用で言うことを聞かせるようなスタイルも普通でしたが、いまはまったく違います。子どもの権利に対する意識が高まり、一人ひとりを尊重するようになりました。
これ自体はとてもいいことです。
ただ、子どもを尊重しようとするあまり、ともすると「制限せずに甘やかす」ことが良いと勘違いされてしまいます。「本人のやりたいようにやらせる」「好きなようにさせる」のが良しとされ、厳しくすると「虐待なのではないか?」と思われるおそれすらあります。
こうした風潮の中で、現代の親は子育てに自信を持てないでいます。子どもに対して気を遣い、友だちのような関係や、子どもが主で親が従といった逆転の関係になってしまうこともあります。これは「正しい親子関係」とは言えません。
子どもにとって、「やりたいことをやらせてくれるけれど、頼りない親」であった場合、愛情も受け取りにくくなります。
会社の上司を思い浮かべてみてください。厳しさもありながらあたたかく、尊敬できる上司から褒められたら、とても嬉しいですよね。叱られても素直に受け取ることができるでしょう。一方、甘いばかりで頼りない上司だったら、褒められても叱られても、たいして何も感じないのではないでしょうか。「また何か言っているよ」というくらいで、その「甘さ」を利用してやろうと思うかもしれません。
当然ながら、本当に困ったことがあったときに相談したいのは、厳しくもあたたかい上司でしょう。
子どもたちも、厳しくあたたかく、困ったことがあったときに頼れる存在を求めているはずです。親は本来そういう存在であるのです。親を頼ることができなければ、子どもはどうしていいかわからなくなってしまいます。