大企業が参入しない「狭い分野」でナンバー1になっている
【事例1】ニッチに特化したビジネスモデル・マニー
マニーは栃木県に本社を置く、針金を素材とした微細加工技術を得意とする医療機器メーカー。1956年の創業から、一貫して医療小物消費財の開発・生産・販売に取り組んでいます。
眼科ナイフの世界シェアは30%を誇り、ニッチな製品群に特化したビジネスモデルで、ニッチ市場で世界的に高い市場シェアを獲得しています。
ちなみにニッチとは「隙間」という意味で、ニッチ市場とは、その市場規模の小さいことを理由に大企業がターゲットとしないような、特定のニーズを持つ市場のことです。
このように、自分たちの強みを活かすことが可能な特定の分野に経営資源を注ぎ込み、そのニッチ市場において高いシェアを獲得してナンバー1を目指す戦略を「ニッチ戦略」と呼びます。
マニーは事業領域を、眼科ナイフやスキンステイプラー等の「サージカルセグメント」、外科手術に使用される針付縫合糸等の「アイレス針セグメント」、歯科根管治療器具や歯科修復材等の「デンタルセグメント」に集中し、存在感を示してきました。
マニーの有価証券報告書から経営指標等の数値を確認していきましょう(図表6)。
ここ5年間の売上高の推移は150億円から250億円程度と、売上高自体は東証プライムの中ではかなり小さいカテゴリーに入ります。
やらないことを明確にしている
利益率は製造業であれば10%程度あれば合格点と言えますが、マニーはリーマンショックやコロナショックの時でも25%以上の利益率を維持しており、強い競争力を保っています。これは医療機器という不況に強い製品を扱っていることも一因と考えられます。
マニーの財務基盤は鉄壁で、自己資本比率は90%を超えています。営業キャッシュ・フローはプラスで推移しており、手元キャッシュも潤沢です。事業継続に何ら不安のないことが確認できます。
マニーの個人投資家向けIR資料の中では、経営戦略と研究開発方針について以下のように記載されています。
〈経営戦略と研究開発方針〉
トレード・オフ(やらないこと)を明確化し、愚直なまでに実行
①医療機器以外扱わない
②世界一の品質以外は目指さない
③製品寿命の短い製品は扱わない
④ニッチ市場(年間世界市場5000億円程度以下)以外に参入しない
自分たちの強みである分野(医療機器)のみをビジネスフィールドと捉え、その分野で世界一の製品を作り、ニッチ市場以外には参入しないというシンプルな戦略が徹底されてきたことが、マニーの競争力の源泉と言えるでしょう。