手指や物の挿入も「性交等」として処罰される

2023年の刑法改正により、強制性交等罪・準強制性交等罪が一つにまとめられ、不同意性交等罪になりました。趣旨については不同意わいせつ罪と同じです。

8類型、婚姻関係の有無にかかわらないこと、性的同意年齢が原則16歳(例外として、5歳差要件)であることも、不同意わいせつ罪と同じです。

これまで「性交等」は、膣性交、肛門性交、口腔性交に限定されていました。しかし法改正によって加害行為の種類が増え、「膣、肛門に陰茎を除く身体の一部や物を挿入する行為であってわいせつなもの」が新たに含まれることになりました。

「身体の一部・物」については、形状や性質による限定はありません。これにより、手指の挿入が当然「性交等」に含まれることになりました。

「物」については、錠剤や座薬のように挿入後に溶ける物であっても該当します。しかし、医療行為など必要性があるものを除くため「わいせつなもの」に限定されています。

・改正のポイント

被害者が年少者の場合、膣性交が難しいために指を入れられることがしばしばありました。これまではその場合、強制性交等罪ではなく、刑が各段に軽い強制わいせつ罪でしか処罰できませんでした。

被害者が大人の場合も、膣や肛門への手指・物の挿入は、傷害罪や暴行罪、強要罪などで処罰されることはあっても、被害者が感じた苦痛とはかけ離れており、やはり刑が軽いという問題がありました。

また膣や肛門に男性器を挿入することと、手指や物を挿入することで、被害者の傷つき度合いは変わらないことが研究で明らかになっており、「性交等」に含めるべきだという声があがっていました。

酒を飲まされ、意識もうろう状態で襲われたときは

【CASE】

飲み会で一気飲みさせられ、記憶をなくした。起きたら男性の家のベッドにおり、意識のない状態でレイプされていたことがわかった。

【ANSWER】

酒や薬で意識を失わせて性交するなど、正常な判断ができない状態の人に対して性交したりした場合、不同意性交等罪が成立します。完全に意識を失っておらず、もうろうとしている状態でも成立します。

ただし、被害者にそれなりの意識があった場合や、被害者の振る舞いによって、加害者が「意識がある」と勘違いしても仕方がないとみなされた場合には、不同意性交等罪が成立しないこともあります。

【CASE】

実父が勝手に10代前半の娘である自分の自室に入り、ベッドに入ってきた。体をさわり、男性器を口の中に入れてきた。

【ANSWER】

「監護者」が、その影響力を利用して18歳未満の人に性交すると、監護者性交等罪が成立します。

監護者とは、同居している親やそれと同じくらいの影響力を持つ人が想定されています。

したがって、加害者が学校や塾の先生、たまたま遊びに来ていた親戚などである場合は、監護者性交等罪は成立せず、不同意性交等罪にあたるかどうかが問題となります。

・被害者が16歳未満の場合……原則として、性交等があれば不同意性交等罪が成立
・被害者が13~15歳の場合……加害者と被害者の年齢差が5歳未満であれば、類型①~⑧などの理由で、同意しない意思を形成、表明、もしくはまっとうすることが困難な状態にさせたり、その状態に乗じて性交等をしたかどうかを検討し、あてはまれば不同意性交等が成立