「すれ違いざまに胸を触られた」も犯罪になる

【CASE】

昼間に街を歩いているとき、すれ違いざまにいきなり胸をさわられた。ビックリして唖然としている間に加害者は逃げていってしまった。これ、警察に相談していい?

【ANSWER】

すぐに警察に行ってください。このような行為は、類型の⑤「同意しない意思を形成、表明またはまっとうするいとまがないこと」にあたりえます。

「いとまがない」というのは、被害者が、性的行為がなされようとしていることを認識してから性的行為がなされるまでの間に、その性的行為について自由な意思決定をするための時間のゆとりがないことを意味します。

したがって、「何秒だったらいい」というような問題ではなく、ケースバイケースとなります。

【CASE】

取引先の社長から商談の最中にわいせつ行為をされ、嫌でしたが、なにもできませんでした。私は小さな会社の社員で、会社の利益はその取引先に頼っているので、怖くて逆らえません。私の上司も、社長のわいせつ行為を受け入れるべきというような物言いをします。

【ANSWER】

それは、類型の⑧「経済的、または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮」により被害者が同意しない意思を形成、表明、まっとうすることが困難な状態にあることに乗じたわいせつ行為といえます。

また、この上司の対応は男女雇用機会均等法に反しますので、会社の相談窓口や弁護士に相談しましょう。

「上司と部下」「教師と学生」といった上下関係にも

類型の⑧は、改正前の刑法では最も立件が難しかった類型といえます。「経済的関係」というのは、「雇用主と従業員」「取引先の職員どうし」といった関係を広く含むと理解されています。「社会的関係」というのは、家庭・会社・学校といった社会生活における人的関係を意味し、次のような関係性を想定しています。 

●「祖父母と孫」「おじ/おばとおい/めい」「兄弟姉妹」といった家族関係
●「上司と部下」
●「先輩と後輩」
●「教師と学生」「コーチと教え子」
●「介護施設職員と入通所者」 など

・改正のポイント

また、類型の⑧は、実は性暴力でとても多いケースでした。しかし「監護者性交等罪」にも含まれなかったり、特に仕事関係となると「恋愛のもつれ」「不倫くずれ」などといわれたりして、なかなか性暴力として扱われず、警察に届けてもほとんどが不起訴にされてきました。今後は、こういった類型についても適切に処罰されることが望まれます。

【CASE】

大学のゼミの泊まり合宿で、夜に宴会があった。しかし、疲れていた私は、先に部屋に戻って寝ていた。熟睡していて気づかなかったが、友だちから「A君が部屋に入って、あなたのパジャマをまくりあげて胸をさわっているところを見た」と言われた……。

【ANSWER】

睡眠状態にあることに乗じてわいせつ行為をすることは、類型の④にあたります。「睡眠」というのは、完全に眠っていなくて「半覚醒状態」で意識がもうろうとしている状態も含まれます。

あなた自身は熟睡していて意識がないでしょうから、警察に行く場合には、目撃していた友だちに証言をお願いしましょう。

畳の上に敷かれた布団、日本式の寝室
写真=iStock.com/Thananat
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