男子って進路決めるの遅いかんじがする
奥州編の最後は、佐々木さん、及川さん、伊澤さん、3人にいちどに話を聞いていく。伊澤さんが話してくれた「いい大人」の話に興味があります。ぜひ及川さんと佐々木さんにも訊いてみたい。
「話をちゃんと聞いてくれる人。久也君が言うように、『そういう人とつるんでるんだから』って決めつける人、多いと思う。あと、上下関係。下の人が、『これしたいんだけど、上の人がああ言うから、俺にはもう無理なんだよ』って言うのは、大人の弱点だと思う」
ここで及川さんが頷く。
「生徒会長として、『こういったことがやりたい』と思ったとき、自分の中では『こういう手順を踏んでいけば達成できるんじゃないか』っていうのがあるんですが、リスクが高いことが通らないような……。 心良く引き受けてくださる先生もいるんですけど、暗に『上まで話を通すのが面倒だ』と言われているようなときもあって。これは先生というよりも、承認を通す手順、システムの責任があると思うんです。ちょっと煩雑すぎる。アメリカでも上に話を通すシステムはあると思うんですが、そんなに細かくはないと思うんですよ。何十人のハンコをどんどんついていくようなシステムじゃない。 あと、学校の先生は職業病みたいなものなので仕方ないと思うんですけど、『高校生だから』っていう見方が、よろしくないのではないか」
及川さんの考える「いい大人」は、どういう人ですか。
「内向きと外向きとあると思います。内向きのいい大人は、否定から入らない。外向きは、自分の駄目なところを隠さずに、それを自分で理解して『自分はここが駄目だから、こうあろう』ということがわかる」
最後に、互いが互いの進路の話を、どう聞いたかも聞かせてください。3年生の佐々木さんは2年生男子2人の話を聞いて、どう思いましたか。
「男子って進路決めるの遅いかんじする。なんでなんだろう。遊んでて、真面目さがないような気がする(笑)。自分の将来について『就職でいいわ』みたいな、そんなかんじがして。わたし? 中3のときには保育士になりたいって決めてました」
伊澤さんの進路の話は抽象的で、及川さんのそれは具体的。きわめて対称的な話だったと思います。及川さんは、伊澤さんの話をどう聞きましたか。
「まあ、抽象的でもいいんじゃないかなと、わたしは思うんです」
伊澤さんは、及川さんの話を聞いて。
「偉いなと思った。決めたってことは、ちゃんと真剣に向き合ったってことだから」
わずか3人。だが、それぞれ違う。互いが違うということを、横で聞きながら考えている。次回も3人の高校生に話を訊く。伊澤さんと一緒に訪れた宮城県北端の港町・気仙沼で出合った3人の話だ。
(明日に続く)